除染土の再生利用と安易な処分をやめよ――国民の熟議と合意にもとづく最終処分を

原子力市民委員会は、福島第一原発事故後の除染で発生した除染土について、環境省が「再生利用」や簡易な「埋立処分」を進めようとしていることは、放射性物質の集中管理という原則に反し、二重基準を持ち込むものだと指摘しています。

また、「国民の熟議と合意」にもとづく最終処分方針を欠いているとして、この方針の撤回と、福島原発事故由来の放射性廃棄物・除染土の体系的な最終処分のあり方を再構築するよう求める声明を公表しました。

【声明要約】
東京電力福島第一原発事故により発生した除染土の管理・処分の問題をめぐって、環境省は福島県内の8,000Bq/kg以下の除染土について、覆土や遮蔽等の飛散防止対策を行った上で、公共事業で再利用する方針を打ち出し、再生利用にともなう手引書の作成を進めています。また、福島県外の除染土については、30cmの覆土をすれば、放射性物質の濃度の上限を定めずとも埋立処分が可能であるとする省令案・ガイドライン案を策定しようとしています。

これら手引書や省令案・ガイドライン案のもととなる「再生利用」および「埋立処分」の実証事業は、住民への十分な説明と合意形成がないまま実施されており、その安全性の検証は極めて短期的かつ限定的に実施されたもので、実証事業とは名ばかりの、事実上、再利用や埋め立て処分の実施と言えるものです。

国は、福島県内の除染土については中間貯蔵施設に持ち込み、30年後に県外の最終処分施設に移設するとし、福島県外の除染土については各県内で処分するとしています。こうした福島県内か県外かによって扱いを区分する方針そのものが、除染土についての市民の理解を混乱させるとともに、今般の「再生利用」「埋立処分」という問題を生じさせています。政府はいったんこれらの方針を取り下げ、「国民の熟議と合意」に基づき、福島原発事故由来の放射性廃棄物・除染土の体系的な最終処分のあり方を再構築すべきです。

*本声明は2019年5月13日に公表されたものです。本文中の制度、環境省の方針、実証事業等に関する記述は、公表当時の状況に基づいています。

声明:環境省は除染土の再生利用と安易な処分をやめ、国民の熟議と合意にもとづいた最終処分のあり方を提示せよ

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2019年5月13日

原子力市民委員会
座 長 大島堅一
委 員 後藤 忍 後藤政志 清水奈名子
    茅野恒秀 松久保肇 武藤類子
    吉田明子

もくじ

要旨

  1. 除染土の「再生利用」を実施してはならない。安易な「埋立処分」も進めてはならない。
  2. 除染土の再生利用と埋立処分の「実証事業」は、そのまま事実上の最終処分となりかねない。事業の安全性は恣意的な手法で「検証」されているにすぎない。住民の合意はおろか理解を得ないままの強引な「実証事業」の推進、ならびに再生利用にともなう手引書の作成、埋立処分に関する省令の策定作業は、即刻中止すべきである。
  3. 国は、福島県内の除染土については中間貯蔵施設に持ち込み、30年後に県外の最終処分施設に移設するとしている。また、福島県外の除染土については各県内で処分するとしている。福島県内か県外かによって扱いを区分する方針そのものが除染土についての市民の理解を混乱させ、さらには、福島県内の除染土の「再生利用」と、県外の除染土の「埋立処分」という2つの問題を生じさせている。政府は、いったんこれらの方針を取り下げ、国民の熟議と合意に基づき、福島原発事故由来の放射性廃棄物・除染土の体系的な最終処分のあり方を再構築すべきである。
  4. 従来の放射性物質管理のあり方と、除染土の「再生利用」や今般の「実証事業」に見られる簡易な埋立てのあり方とには、大きな違いがある。放射能をおびた物質の管理に関して、二重基準(ダブルスタンダード)が存在している。これは、放射性物質管理行政を混乱させ、将来、さらに大きな問題を引き起こす可能性がある。原子力利用を国策として推進してきた日本政府は、事故発生の責任を認め、除染土を含む放射性物質の管理行政をより厳重なものとしなければならない。

本文

1.除染土の「再生利用」を実施してはならない。安易な「埋立処分」も進めてはならない。

放射性物質汚染対処特措法(以下、特措法)に基づく除染で生じた除染土の総量は、福島県内で最大2,200万㎥規模、福島県外の汚染状況重点調査地域で33万㎥規模と推計されている。福島県内の除染土については、「中間貯蔵開始後30年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずる」とされている1。環境省は2016年4月「中間貯蔵除染土壌等の減容・再生利用技術開発戦略」を策定し、8,000Bq/kg以下の除染土を、覆土・遮蔽などの飛散防止対策を行った上で、公共事業で再利用する方針を打ち出した。

現在、飯舘村長泥地区では農地造成における再生利用の実証事業が、南相馬市小高区では常磐自動車道の拡幅工事での使用が計画され、再生利用にともなう手引書の作成が進められている。二本松市の農道整備における再生利用の計画は、住民による反対運動により実質撤回に追い込まれた。

他方、福島県外(岩手・宮城・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉)の除染土は、特措法に基づき各県内で処分することになっている。しかしどの県でも最終処分の見通しが立たないために、行き場のない放射性物質を各自治体と民間とが保持し続ける状況が続いている。このような状況を打開するためには、福島県外の除染土を含む最終処分政策が再構築される必要がある。にもかかわらず、環境省は、そのような抜本的対策をとろうとせず、茨城県東海村と栃木県那須町で拙速に埋立処分の実証事業を実施してしまった。さらに、環境省は、福島県外の除染土については、30cmの覆土をすれば、放射性物質の濃度の上限を定めずとも埋立処分が可能であるとする省令案・ガイドライン案を策定しようとしている。

こうした実証事業、ならびに手引書や省令の作成が進み、除染土の「再生利用」や管理のゆるい「埋立処分」が一般化すれば、原発事故によって深刻な被害を受けた地域の被害を増幅するだけでなく、全国どこにでも除染土の持ち込みを通じて汚染がもたらされる。これまで除染土は各市町村によって公的に管理されてきたが、現在の環境省の方針のような簡易な方式での埋設が可能になれば、除染土の追跡・管理は今後ほとんど不可能になる。

除染の意義と効果については多様な評価がありうるとはいえ、除染は国民の被ばくを低減するという目的のために実施されたはずである。にもかかわらず、除染によって生じた除染土を「再生利用」したり不特定多数の各所で埋設したりするのでは、一体何のために巨費を投じて除染事業を実施したのか、その目的そのものが失われてしまう。汚染を被った地域の人々に、さらなる被ばくのリスクを与えること、さらには汚染が少なかったエリアに除染土(放射性物質)を持ち込むことは、本来の除染の目的に明らかに反している。放射性物質管理の原則は、分散させず集中管理することにある。この原則を外して、安易に除染土の「再生利用」と「埋立処分」を強行することは倫理的にも許されない。

2.除染土の再生利用と埋立処分の「実証事業」は、そのまま事実上の最終処分となりかねない。事業の安全性は恣意的な手法で「検証」されているにすぎない。住民の合意はおろか理解を得ないままの強引な「実証事業」の推進、ならびに再生利用にともなう手引書の作成、埋立処分に関する省令の策定作業は、即刻中止すべきである。

現在、除染土の「再生利用」や「埋立処分」の実証事業が進められている。計画対象となった地域の住民は、覆土・遮蔽の効果は十分なのか、地下水への影響はないのか、地滑りや洪水などの自然災害で除染土が散逸する可能性はないか、実証事業が計画されるだけで風評が生じ、地域の“未来”を奪われる可能性があるのではないか等、さまざまな懸念を抱いている。一部では、当該事業に対する根強い反対運動も存在する。

にもかかわらず、実証事業の計画は、住民への十分な説明と合意形成がないまま、環境省によって拙速かつ強硬に進められている。また、安全性の検証は、極めて短期かつ限定的に実施されているだけで、地域住民の疑義に対して十分に答えたものとはなっていない。さらに、安全性検証の主体である環境省が、同時に事業推進者であることから、公正な検証とはいいがたい。

仮に「再生利用」や「埋立処分」の実証事業をするとしても、安全性の検証を“結論ありき”で進めるべきではない。あらゆる危険性のないことが検証されることが当然必要であり、危険性が認められた場合のための原状回復措置もあらかじめ考慮されてしかるべきである。こうしたことが満たされて初めて実証事業の実施が可能となる。しかし、今般の実証事業においては、事業終了後に除染土の除去を想定しない工法が取られ、実証事業後は埋設されたままになる。これでは、実証事業とは名ばかりで、事実上、再利用や埋立処分の実施といってよいであろう。このような“なし崩し的”な事業推進は、指定廃棄物最終処分場の候補地について「詳細調査」がなされようとした際にも危惧されたことで、福島県内県外いずれにおいても、政府のこのような強引な姿勢に住民の不信と不安は募るばかりである。

飯舘村長泥地区の実証事業は、事情がさらに複雑である。長泥地区の実証事業は、「特定復興再生拠点事業」の一部である環境再生事業の一環としてもちこまれた2。長泥地区は帰還困難区域であるため除染の対象にはなっていなかったが、特定復興再生拠点事業に指定されれば国によって除染が行われる。地元関係者にとっては、実証事業を受け入れれば長泥地区の整備と除染が進むという側面があり、葛藤をもちながらの実証事業受け入れとなった3。ふるさとの回復を願う住民にとって、除染を切望するのは当然のことである。国は、「特定復興再生拠点事業」と実証事業という名目での事実上の除染土利用とをあわせて持ち込んでいる。このことが地元住民の苦悩をさらに深めており、許されることではない。

大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村などの帰還困難区域の一部においても、「特定復興再生拠点」の指定がなされた。これら自治体の「特定復興再生拠点」には、ひとまず「再生土壌」が持ち込まれる計画はない。今後、これらの地域において除染土の「再生利用」が行われてはならない。

3.国は、福島県内の除染土については中間貯蔵施設に持ち込み、30年後に県外の最終処分施設に移設するとしている。また、福島県外の除染土については各県内で処分するとしている。福島県内か県外かによって扱いを区分する方針そのものが除染土についての市民の理解を混乱させ、さらには、福島県内の除染土の「再生利用」と、県外の除染土の「埋立処分」という2つの問題を生じさせている。政府は、いったんこれらの方針を取り下げ、国民の熟議と合意に基づき、福島原発事故由来の放射性廃棄物・除染土の体系的な最終処分のあり方を再構築すべきである。

福島県内の問題

福島県内の除染土は、中間貯蔵施設に運び、同施設内の除染土・廃棄物は貯蔵開始から30年後に福島県外に移設するのが国の方針である。しかし福島県外への移設先と移設プロセスは検討の俎上にすら上がっていない。福島県外の移設先について検討すら行わないのであれば、30年後に福島県外に移設するという方針自体が現時点でまぼろしにすぎなくなる。

にもかかわらず、国(環境省)は、30年後に県外に移設することが現実に可能であるかのような前提をおいたうえで、最終処分する総量を減らすという名目で、その前段階の中間貯蔵施設への搬入量を減らすために「再生利用」事業を進めようとしている。さらには、中間貯蔵施設へいったん搬入したものについても、減容化や分別した後に「再生資材」として利用するために搬出する計画がつくられている4。これらはいずれも、最終処分量を減らし、放射性物質を含む除染土・「再生資材」の福島県内での「再利用」を増やそうとするものである。このような本末の転倒した事業を推し進めることは、ふるさとの再生を願う福島県民にとって納得しがたいものとなるだろう。

福島県外の問題

福島県外の除染土について国(環境省)が示した「埋立処分」の方針案は、福島県外の問題を解決するどころか、より一層深刻化させるものとなっている。環境省の方針案では、「覆土厚さを30cm」、「雨水等の侵入の防止や地下水汚染の防止等の措置は不要」という、通常のごみ(一般廃棄物、産業廃棄物)の最終処分場の設計仕様にも満たない内容となっている5。さらには、放射性物質の濃度8000Bq/kgを超える除染土を埋めることすら容認するものとなっている。環境省は、いったん集められた放射性物質を含む除染土を、管理せずに拡散させようとしていると言ってよい。これは、同程度の放射能濃度を持つ放射性物質の管理・処分のあり方にまったくそぐわないものとなっている。除染土の扱いは、従来の放射性物質の管理のあり方と矛盾するものであってはならない。

福島県外では、8000Bq/kgを超える放射性廃棄物(指定廃棄物)は、各県で最終処分することとされている。しかし、最終処分場の詳細調査候補地となった地域では、栃木県塩谷町、宮城県加美町などのように、地元自治体も加わった反対運動が展開され、最終処分の計画は進展していない。一方で、2016年4月の特措法施行規則改正を根拠に、再測定によって8000Bq/kgを下回ったとして指定を解除された廃棄物は、通常のごみ(一般廃棄物、産業廃棄物)と同様に焼却や最終処分が進められつつある。すなわち、本来は集中管理すべき放射性廃棄物に対する政府の責任が「解除」され、管理体制が不十分なままの最終処分が各地で“なし崩し的”に進む状況となってしまった。

幅広い議論の必要性

事故由来の放射性物質への対処における政府の無責任で拙速な施策が福島県内・県外いずれにおいても等しく地元住民と自治体に不条理な負担をもたらしている現状を原子力市民委員会は強く憂慮する。このまま除染土の安易な利用と埋設を進めれば、福島原発事故由来の放射性物質は、集中管理されるどころか、無秩序に拡散することになりかねない。除染土の「再生利用」および「埋立処分」という政策によって、除染土を広く拡散させることを、福島県民を含む日本に住む人々は望まないであろう。

いま重要なのは、除染土の最終処分のあり方が定まっておらず、数多くの根本矛盾を抱えたままの状態を改めることである。まずは現状と問題点を国民に周知し、透明性を確保したうえで、国の責任のもとに国民的議論を行わなければならない。そもそも「中間貯蔵施設に運び込まれた除染土・放射性廃棄物を30年後に県外移設する」という方針、ならびに「福島県外に降下した放射性物質は各自治体で処分する」という方針に妥当性や現実性があるのか、といった点も含めて今一度立ち止まり、除染土の処理処分について、さまざまな立場の専門家や全国各地の市民の参加による熟議を重ねる必要がある。国は、それを踏まえて最終処分に関する政策を再構築すべきである。「再生利用」地および「処分」地および中間貯蔵施設が、なし崩し的に最終処分場となることは許されない。

4.従来の放射性物質管理のあり方と、除染土の「再生利用」や今般の「実証事業」に見られる簡易な埋立てのあり方とには、大きな違いがある。放射能をおびた物質の管理に関して、二重基準(ダブルスタンダード)が存在している。これは、放射性物質管理行政を混乱させ、将来、さらに大きな問題を引き起こす可能性がある。原子力利用を国策として推進してきた日本政府は、事故発生の責任を認め、除染土を含む放射性物質の管理行政をより厳重なものとしなければならない。

従来、放射性物質は、原子炉等規制法に基づき核種に応じてクリアランス基準を定め(セシウムの場合は100Bq/kg)、それ以上であれば「放射性廃棄物」として扱われ、厳重に管理されてきた。しかしながら、放射性物質を含むという点では同じであるにもかかわらず、除染土については、「再生利用」や、簡易な形での「埋立処分」が可能となるなど、従来の規制のあり方とは全く異なる扱いがされようとしている。これは、放射性物質の管理・処分に関する二重基準(ダブルスタンダード)である。

市民の生活圏に「放射性物質を持ち込ませない」ことが、市民生活の安心の基礎である。除染土の「再生利用」、安易な「埋立処分」が一般化すれば、その前提が崩れる可能性がある。放射性物質の管理にダブルスタンダードを設ければ、その扱いに関する認識が甘くなり、将来、放射性物質の漏洩や飛散など重大な事故を引き起こす可能性すらある。

福島原発事故を防ぐことができなかった責任を負うべき日本政府は、放射性物質の管理を緩めるのではなく、事故前の放射性物質の取り扱いに厳格に準拠し、真っ当に行うべきである。そして、除染土の最終処分のあり方を深刻に受け止め、主権者である国民による熟議と合意を経て、除染土を含む放射性物質、放射性廃棄物の管理を適切に行うべきである。

以上

本件についての問い合わせ先

原子力市民委員会 事務局
〒160-0008 東京都新宿区四谷三栄町16-16
iTEXビル3F(高木仁三郎市民科学基金内)
03-6709-8083
email@ccnejapan.com


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2025年2月18日の後続声明
声明:除去土壌の‘復興再生利用’は、放射能に汚染された土の無秩序な拡散につながり、許されない− 省令案は趣旨が変質しており、改正の正当性がない −

補助資料
2025年1月15日
講演資料:放射能に汚染された土の無秩序な拡散につながる「除去土壌の再生利用」はありえない

脚注

  1. 中間貯蔵・環境安全事業株式会社法、第3条の2 ↩︎
  2. 環境省(2018)「除去土壌再生利用実証事業について」、中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会(第8回)平成30年3月29日、資料3 http://josen.env.go.jp/chukanchozou/facility/effort/investigative_commission/pdf/proceedings_180329_03.pdf ↩︎
  3. 河北新報 2018年8月4日<除染土再利用 原発被災地の行方>(下)帰還を切望 苦渋の決断 ↩︎
  4. 環境省「中間貯蔵施設情報サイト」の「県外最終処分に向けた取組」に掲載の「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略(2016年4月公表)イメージ」http://josen.env.go.jp/chukanchozou/facility/effort/ ↩︎
  5. 環境省「除去土壌の埋立処分に関する環境省令及びガイドラインにおける記載事項(案)」、除去土壌の処分に関する検討チーム会合(第4回)2019年3月15日、資料2 https://www.env.go.jp/press/t04_mat02.pdf ↩︎
声明・見解・提言

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