小森敦司(ジャーナリスト)さんにご寄稿いただいた記事の「下」になります(全2回)
経産省は原発事故処理の「幕引き」を図ったのか?(下)
――賠償・除染・東電負担に「歯止め」狙う 2013年の政策形成
経済産業省は東京電力福島第一原発事故から2年後の2013年、事故処理の「幕引き」をしようとしたのではないか? 働きかけた先は本稿(上)で描いた原子力規制委員会に限らず、多方面に及んだ。この(下)でその動きを整理してみたい。
(1)賠償の「終わり」を議論
「線量が低下してきており……大体4ミリシーベルト毎年ということでございまして……個人線量を測っていくことになると、また違うデータが出てくると思いますが、我々としては一人一人きめ細やかに線量を把握していくことが大事になっていくと考えております」
事故から約2年半後の2013年9月10日にあった第34回原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)1。賠償金額の目安などをつくる国の機関だ。
この日、内閣府原子力被災者支援チームの参事官が、避難指示が出ていた田村市都路地区の状況を説明した2。国の避難指示区域で初の解除になると目された。本稿(上)で書いたが、個人線量計の活用にも参事官は言及したうえで、こう説明を締めくくった。
「避難指示の解除を考えていきたいという段階です」
その参事官の名前を、政官界の人事データを収めた「政官要覧」で調べると、経産省からの出向者だった。本稿(上)に書いたとおり、この支援チームは内閣府の「看板」を掲げていても、実際は経産官僚が大多数を占めているのを知っているので、参事官が経産官僚であっても驚きはない。
ただ、2013年9月10日という日付は、「なるほど」と筆者は思った。本稿(上)に描いた原子力規制委員会の有識者を交えた会議「帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム」の初回とほぼ同じ時期だった。
原賠審も規制委も、同じタイミングで、避難指示の解除後の具体的な手立てを論じ始めた。
例えば、原賠審はこの日、参事官の説明の後、避難者の精神的苦痛に対する慰謝料(一人月額10万円)の「終わり」の議論を本格化させた。解除して後、いつまで支払うか。インフラや学校などの復旧状況を考慮して「1年間」が俎上にのぼった。
委員の間には「短すぎる」との声もあったが、同年10月25日の第36回の審査会において、「1年間」で大筋合意した。こうして福島県田村市の都路地区の一部に出ていた避難指示は2014年4月1日、解除された。この後、避難指示の「解除ラッシュ」になっていくことは本稿(上)にも書いた。
とはいえ、解除までの歳月は、経産省にしてみると予想以上の長さだったようだ。
民主党政権時代の話になるが、細野豪志・環境相兼原発担当相(当時)は2011年12月、朝日新聞のインタビューに答え、住民が戻り始める時期について「来春(2012年春)から年央(2012年6~7月)だろう」と語っている。この言葉に照らすと、2年の遅れということになる。
冒頭の原賠審で発言した生活支援チームの参事官は2014年2月にあった原賠制度をめぐるシンポジウムで、なぜ遅れたのか理由を語っている。これも興味深い。3抜粋する。
「区域見直しにとても時間がかかったのは賠償制度とのリンクがあったからです……帰還困難区域に近づけば近づくほどお支払いする賠償金額が高くなる構図で、当たり前の理屈です。中には『帰還困難区域がいい』という方もいて、コミュニティの合意形成が難しかったということです」
「被災者の将来不安は大きいですから賠償もできるだけ多額にという要求が出てきます……避難指示が出ているかぎり精神損害もお一人毎月10万円が出ていくという制度設計にならざるをえなかった。逆に言うと、賠償によって避難指示がなかなか解除されない実態になる……復興の逆アクセルになってしまう懸念も出てきているのかもしれません」4
ところで、「入るを量りて出ずるを制す」という言葉がある。中国の古典に由来する。確保した収入の範囲内に支出を抑える、という財政や経営の基本ルールだ。ここまで「出ずるを制す」方を見てきたが、経産省はこの頃、「入るを増やす」手まで打っていた。
国(国民)ももっと負担を——。まったく次元の異なるエピソードになるが、探ってみたい。
(2)賠償・除染・廃炉の負担が「青天井」
東京電力の事故対応費用が際限なく増えており、国も費用負担をしてほしい。応じてもらえないなら、取締役を辞めさせていただく——平たく言うと、そんな脅迫めいた言葉を記した紙が筆者の手元にある。
タイトルは「株主総会への対応について」。2013年3月、茂木敏充・経済産業相(当時)に出された。
取締役会長ら社外取締役6人が署名し、政府に対応を迫る「連判状」だ。今回、経産省に対する情報公開請求で入手した(名前は黒塗りだった)。本稿(上)で原災本部の議事録の「抜き書き」を書いたが、それと、まさに同じ日付「平成25年3月7日」が入っていた。以下、抜粋する。
「事故への対応は、その広がりと被害額、復旧に要する額の大きさにおいてまさに『国家的難題』であり、その難題の金額的広がりが徐々に明らかになりつつある中で、国の責任分担、費用分担のあり方が曖昧であり、原子力発電所の再稼働についても不透明なまま5、経営改革を実効ある形で進めることは困難であると感じております」
「私ども現経営陣としては……国の方針に十分に納得がいかないまま、現在の職を本年6月の株主総会以降も続けることは株主に対しても不誠実のそしりを免れないと考えます。政府におかれましては、こうした私どもの所感をご勘案いただき、株主総会後の経営体制を御検討いただくようお願い申し上げます」
全体をスキャンして下に貼る。

※ 黄色の下線は筆者が引いた。
作成したのは2012年6月に東電の取締役兼執行役になった経産官僚・嶋田隆氏に違いない。東電は経産省が主導する原子力損害賠償支援機構(現在の原子力損害賠償・廃炉等支援機構。以下、支援機構)の出資を受け、実質的に国有化された。それで、嶋田氏が送り込まれた(後に嶋田氏は経産事務次官になる6)。
しかし、賠償など東電の事故対応費用は、きっと嶋田氏らの想定以上に増えた。嶋田氏が東電に来て、まだ半年も経ってない2012年11月、東電は「再生への経営方針」なる文書を発表している。この時に、もう音を上げている。
「被害者への賠償と高線量地域の除染費用を合計すると……交付国債の発行額5兆円を突破する可能性がある。さらに低線量地域も含めた除染、中間貯蔵費用などについて、同程度の規模の費用が、今後、追加で必要となるとの見方もある」
「当社の企業体力(資金不足、人材流出)は急速に劣化し始めている。このまま賠償・除染・廃炉の負担が『青天井』で膨らんでいき……将来への展望が見いだせない企業のままの状態が続けば、士気の劣化も加速度的に進む懸念が強い」
そう記して国の支援を求めたが、動きは鈍かった。それで嶋田らは、やや乱暴にも見える「連判状」のような策を使ったのだろう7。こうした経緯は日本経済新聞の連載「背水国有東電」の初回「『国、動かぬなら辞める』(迫真)」(2013年7月9日)が最初に報じた。記事は、社外取締役全員の署名が並ぶこの「事実上の辞表」が、経産省本省をして財務省に働きかけさせ、さらに首相官邸をも動かす、と伝えた。
2013年後半の各新聞の記事を追うと、経産省が年末の予算編成をにらみ、政治力を使って猛烈な攻勢を強めたことが分かる。標的の一つが、除染特措法の「求償規定」だ。
本稿(上)にも書いたが、2011年8月に議員立法でできた除染特措法は、環境省が実務的に立法作業をした。国庫負担を逃れたい財務省の後押しもあり、国が要した除染費用を東電に請求できる「求償規定」が定められた。これを額賀福志郎氏ら同省と親密な自民党議員を頼りに潰そうとした。「経産省として本気でした」。経産官僚からそう聞いた。
この頃の朝日新聞の事故処理費用に絡む政治関係の記事の見出しを並べる。
- 「汚染水・除染『特措法を』 自民委、国関与強化求める」(2013年10月8日)
- 「原発事故処理、広がる国関与論 与野党から提言」(2013年10月27日)
- 「現実見据え国費投入 責任の所在あいまい 原発事故対策、与党提言」(2013年11月12日)
(3)バラバラの話、結び合わさったのは
バラバラに進んでいた話が結び合わさる。
経産官僚たちの各方面への働きかけは、2013年11月上旬にとりまとめられた自民党と公明党の復興加速化の提言8を経て、安倍内閣が2013年12月20日に閣議決定した「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」と題した指針で実を結ぶ。91011
閣議に先立つ政府の原子力災害対策本部。この指針のポイントを説明したのは、議事録によると茂木敏充経産相(当時)だった。使った資料の表紙のページには、例の「原子力被災者生活支援チーム」の名が入っていた12。表紙を除く計5枚の資料のうち、根幹をなす2枚を下に貼り付ける。


どうだろう。筆者に言わせたら、政府、とくに経産省として、東電福島第一原発の事故処理の「幕引き」を図るための方策集に見えた。次のような項目と具体策が示されている。
➀避難指示の解除と帰還に向けた取組の拡充 → 帰還後は個人線量重視。健康不安対策等を充実。
②帰還に必要十分な賠償の追加 → 避難指示の解除後1年間は精神的損害などの賠償を継続。
③国と東電の新たな負担のあり方 → 除染費用は支援機構保有の東電株の売却益により回収を図る。
④中間貯蔵施設の費用は、エネルギー特会(対策特別会計)から支援機構に交付する資金により回収。
がっちゃんこ——そんな霞が関の官僚用語を思い出した。複数の資料や政策などを「1つに合体させる」意味で使われる言葉だ。筆者が働いていた新聞社など一昔前の企業でも使われていた。思うに、この「指針」は、ここまで書いてきた別次元の話を、ホチキスでがっちゃんこしたような代物だ。
だが、一つだけ筋が通っている。どれも、東電の負担を抑えることにつながるのだ。
➀は本稿(上)に記したが、被ばく線量の評価を個人線量にすることで、被ばく基準の実質的な緩和となる。ひいては賠償・除染などの費用抑制になる13。②は言い換えれば、避難指示解除後1年間で東電が支払う慰謝料を打ち切るという話だ。この2つ、「復興の加速」と言えるのだろうか。
③にしても、報道によれば、東電株の株価が上昇して得られる売却益は本来、国庫に返すべきものだ14。④は電気料金に上乗せしている税金から支払うもので、国民に負担を押し付けるものだ。いずれも、環境を汚染したものに費用負担させる「汚染者負担の原則」をないがしろにしていないだろうか151617。
東電は2013年12月27日、この閣議決定の内容を踏まえた新しい再建計画「新・総合特別事業計画」を政府に提出、翌14年1月15日に政府から認定を受けた18。そして政府は同年4月1日、福島県田村市の都路地区の一部に出していた避難指示を解除。前記のとおり、ここから避難指示の「解除ラッシュ」となっていく。
経産省の緻密で用意周到な剛腕作業に筆者は圧倒される。
ただし。事故から15年が経った今、どうなったか。廃炉や除染などの事故対応費用はさらに膨らんだ。避難指示は、帰還困難区域を除いて解除されたが、住民の帰還はあまり進んでいない19。また、帰還した住民が個人線量計を使っているとの記事も見ない。
除染土は県外で最終処分することになっているが、場所は見つかっていない。事故で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)は、ごく微量しか取り出せていない。東電の経営はといえば、新潟県の柏崎刈羽原発6号機の営業運転にこぎつけたとはいえ、依然として厳しい状況にある。
経産省と東電の事故処理はまだ終わらない。原発を国策として進めてきた経産省の責任も、今日まで真正面から問われたことはない。
筆者が7月下旬、内閣府原子力被災者生活支援チーム(以下、支援チーム)に関わっているとみられる複数の経産官僚に向けてメールで送った質問事項の要点を、以下に記しておく。
- 「経産省の別動隊」とも形容される支援チームが、避難指示区域の見直しなどを担うのは問題がないか。東電の再建を図るため、その費用負担を減らしたいのでは?
- 支援チームが関わる「線量水準に応じた防護措置のあり方に関する関係課長打ち合わせ」は、個人線量計を使うことで、被ばく線量の長期目標を緩和する意図があったのでは?
- 閣議決定された「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」は、精神的損害等の賠償について避難指示解除後1年間とし、除染費用を東電株の売却益により回収することなどを決めた。経産省・支援チームとして、事故の「幕引き」を図る意図があったのでは?
- 上記「加速に向けて」では、個人線量計を用いて帰還する住民の線量をきめ細かく測定し、結果を説明するとしたが、そうした個人線量の把握・管理は現在までうまくできているのか?
結局、返答はもらえなかった。なお、筆者の情報公開請求に絡む支援チームから筆者への直近の郵便物には、経産省の所在地が記されていた。
※ 部屋番号と電話番号は筆者が黒く塗りつぶした。
前の記事
経産省は原発事故処理の「幕引き」を図った?(上)――2013年、規制委と避難指示解除をめぐる政府内文書を追う
(4)資料・脚注
- 過去の原子力損害賠償紛争審査会の議事録や配布資料はこちらにある。https://warp.ndl.go.jp/web/20190603195826/www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/giji_list/index.htm ↩︎
- 田村市都路地区の一部は、原発事故後、警戒区域になった後、2012年4月1日に避難指示解除準備区域に指定された。なお、被災地の近況は朝日新聞の「【そもそも解説】原発事故の避難指示、今はどうなっているのか」(脚注19も参照してほしい)(2026年3月22日)にうまくまとめられている。一部を以下、引用する。
:どれくらいの地域に国の避難指示が出たのか?
:福島県内の11市町村に及び、うち6町村(浪江、双葉、大熊、富岡の4町と葛尾、飯舘の2村)は全域が対象になった。帰還困難区域は南相馬市を加えた7市町村に設けられた
:いまも避難指示は続いているのか?
:もともと放射線量が比較的低く、避難指示区域全体の7割を占めていた『避難指示解除準備区域』と『居住制限区域』は14~20年にすべて解除された。帰還困難区域は、想定より線量が自然に下がったこともあり、かつての中心街などは『復興拠点』として22年と23年に解除された。ただ、現在も名古屋市の面積に近い309平方キロで指定が続く
:避難指示が解除された地域で、住民はどれくらい戻ったのか?
:避難指示区域には原発事故時に8万9千人が暮らしていた。1月末時点の居住者は1万8千人。ただ、他地域から転入した新住民の人数も含まれる。内訳をつかめていない自治体もあり、11市町村に戻った全体の住民数はわからない。全域に避難指示が出た6町村に限ると、帰還者は4千人にとどまる ↩︎ - 原子力規制委員会の初代委員長を務めた田中俊一氏は、総合学術誌「学術の動向」(2021年3月号)に、「原発事故の教訓─福島の復興を妨げるもの」というタイトルの論考を寄せた。この中で、「避難と解除」に関して次のように書いている。「避難は、年間20 mSv(3.8 μSv/h)を越える地域が対象とされ、中でも50 mSvを越えると予測された地域は帰還困難区域に指定された。事故から、3~4年後には、環境の放射線量は大幅に減少し、山林等の一部の地域を除き避難は解除できる状況になっていたが、『除染なくして、避難解除はしない』、『生活インフラの整備など自治体の合意がなければ解除しない』とした政治発言によって、誰が何に基づいて避難解除するかの判断の根拠が曖昧になり、避難解除は大幅に遅れている。結果的に、ふるさとに戻って復興しようとする住民の意欲が大きく阻喪されているばかりでなく、事故から6年経過した2017年3月末に、除染を終えた自治体や地域の避難が解除されたものの、除染を終えていない大熊町、双葉町、浪江町他、その他の相双地区の町村の一部地域では、現在でも避難指示が維持されたままで、解除の見通しもない深刻な現実に直面している。避難が解除されなければ自宅への立ち入りもままならず、ふるさとの復興も住民の心の復興もあり得ないことは自明である」 ↩︎
- 朝日新聞の岡本進記者は福島県川内村での取材をもとに2014年10月4日の記者有論「原発避難解除 帰れぬ故郷、支援続けて」で次のように指摘した。「ここの住民にとって1人月10万円の慰謝料は実質、生活費だ。だが、解除によって1年後に打ち切られる。政府が解除方針を決めた8月の住民懇談会で、政府側トップとして出席した赤羽一嘉・経済産業副大臣(当時)は『本当はこの仕組みはおかしい。賠償や生活支援は別途考えなければならない』と発言していた。不備を認めるのなら解除前に余計な出費の補填策を住民に示し、不安をやわらげるべきだったと思う……自分たちに何の落ち度もなく、人生を変えさせらた被災者に負担を強い続けていいはずがない」 ↩︎
- 「原子力発電所の再稼働についても不透明なまま」とのフレーズに筆者はひっかかっている。「原子力発電所の再稼働を確約してほしい」と東電の社外取締役らが経産大臣に求めた、と解釈できないか。 ↩︎
- 田氏は2021年10月、岸田文雄政権で政務担当秘書官に就き、岸田政権を支えた。https://digital.asahi.com/articles/DA3S15065887.html?iref=pc_ss_date_article ↩︎
- 「再生への経営方針」には次の一文がある。「事故への償いと廃止措置を長期間にわたって継続的にやり抜くために、当社はあらゆる努力を傾注する。しかしながら、被災地での復興を円滑に進めていくために今後必要と見込まれる費用は、一企業のみの努力では到底対応しきれない規模となる可能性が高い」。今回の取材で嶋田氏に当てる機会を逸したが、この一文は嶋田氏が自身の思いを吐露したものではないかと筆者は思っている。 ↩︎
- 自民党と公明党の東日本大震災復興加速化本部の第3次提言「原子力事故災害からの復興加速化に向けて」(https://www.jimin.jp/news/policy/130542.html)には次の記述がある。「『場の線量』ではなく実際の『個人の線量』を基にし、被ばく低減を図るためのきめ細かな対策を講じていくこと」。官僚の手助けなしに、こうは書けないだろう。 ↩︎
- https://www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/genshiryoku/dai33/index.html ↩︎
- 福島大学教授だった塩谷弘康氏は月刊誌「日本の科学者」2016年3月号に寄せた「原発災害被災者住民の苦しみ」と題した論考で、原子力規制委員会の「帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方」や、閣議決定された「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」などに絡んで、次のように指摘した。「これらは、除染・損害賠償費用の圧縮と避難生活の早期解消を狙ったもので、帰還困難区域の住民には移住の圧力が、避難指示解除準備区域と居住制限区域の住民には早期帰還の圧力がかかることになった」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsci/51/3/51_20/_pdf/-char/ja ↩︎ - 大阪市立大学(現・大阪公立大学)教授の除本理史氏は「季刊 経済理論」第54巻第4号(2018年1月)の特集論文「原発災害の復興政策と政治経済学」で、2013年12月の閣議決定が帰還困難区域に対して移住先で住居を確保するための賠償の追加などを打ち出したことに関して、こう指摘した。「帰還または移住によって避難という状態を終了させていくことを意味する。こうして2013年末以降,帰還政策がしだいに避難終了政策という性格を強めてきたという側面もみておく必要がある」 ↩︎
- https://www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/genshiryoku/dai33/siryou2-1.pdf ↩︎
- 例えば朝日新聞は2013年11月12日の「現実見据え国費投入 原発事故対策、与党提言」との記事で、「政府には、除染目標の考え方がいまより緩くなれば、除染にかかる費用もその分減らすことができる、との思惑も働いている」と書いた。 ↩︎
- 朝日新聞の2013年12月17日の「除染に東電株売却益 政府方針、国庫に戻さず」は次のように指摘している。「株式の売却で利益が出れば、国庫に戻して納税者に還元するのが本来のかたちといえる」「ダイエーやカネボウなどを再建させて07年に解散した産業再生機構は、残った財産の432億円を国庫に納めた。政府が持つ日本たばこ産業(JT)株を今春売り出して得られた約1兆円も復興財源に使った」 ↩︎
- 日本経済新聞はこの時、決まった費用負担の全体像を2013年12月20日の「原発事故処理 政府が費用分担決定」で分かりやすく伝えている。https://www.nikkei.com/article/DGXNASFS20045_Q3A221C1EA2000/ ↩︎
- 指針の本文には、「現在計画されている除染を実施した後の更なる取組については、復興のインフラ整備・生活環境整備公共事業的観点から、帰還者・移住者の定住環境の整備等、地域再生に向けた取組として実施する」と書き込まれた。 ↩︎
- 東京新聞は2013年12月21日、「東電除染 国が全額肩代わり 国民負担 追加の恐れ」との見出しの記事で、政府の決定を厳しく批判した。https://www.tokyo-np.co.jp/article/236718 ↩︎
- 朝日新聞は2014年1月16日の政府の東電再建計画の認定を伝える記事で、こう記した。「再建計画は、除染など福島第一原発事故の対応で東電を支援する前提になっており、政府と東電は一体となって原発の再稼働を進めていく」 ↩︎
- 読売新聞は2026年3月9日の記事「帰還遅れる福島11市町村、大熊町は7割が新住民」で次のように伝えた。「東京電力福島第一原発事故で避難指示が出た福島県の11市町村の居住人口は約1万8000人で、事故前の2割にとどまることが、各自治体への取材でわかった。東日本大震災から11日で15年となり、避難先に定着した住民が多いとみられる。一方、避難指示の解除が遅れた大熊町と双葉町では帰還住民は少ないものの、居住人口の7割弱を移住者が占め、新住民によるまちづくりが進んでいる」「11市町村では、震災から3年後の2014年4月から22年8月にかけて、避難指示が解除されて住民帰還が始まった。だが、避難指示区域の居住人口は、震災当時の8万8330人から1万7818人(今年1~2月時点)に減っている」。https://www.yomiuri.co.jp/shinsai311/news/20260308-GYT1T00350/ ↩︎
(5)小森敦司さんプロフィール
小森敦司(フリージャーナリスト)
1964年生まれ。上智大学法学部卒。1987年に朝日新聞社に入社、経済部やロンドン特派員、エネルギー・環境担当の編集委員などを経て2021年に退社、フリージャーナリストに。著書に「日本はなぜ脱原発できないのか」「『脱原発』への攻防」(いずれも平凡社新書)、「原発時代の終焉」(緑風出版)など。2024年、行政書士事務所を開業。➡️ 著者の記事一覧
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