小森敦司(ジャーナリスト)さんからご寄稿いただいた記事です。約30件の情報公開請求や関係者取材をもとに、2013年に政府内部で進んだ避難指示解除、個人線量への転換、賠償・除染費用をめぐる政策形成過に関する検証となります。全2回です。
経産省は原発事故処理の「幕引き」を図ったのか?(上)
――2013年、規制委と避難指示解除をめぐる政府内文書を追う
東京電力福島第一原発事故から2年後の2013年、経済産業省は総力を挙げて、事故処理の「幕引き」を図ったのではないか?——今日に至る避難指示の解除方針や東電再建策の大枠を定めた頃の政府内の動きを調べるため、筆者は関係省庁にざっと30件ほどの情報公開請求をした。残念ながら、保存期間を過ぎて廃棄済みといった理由から不開示決定通知書の「山」となった。
それでも苦労して入手した資料を丹念に読み込んでいくと、経産省が、実質国有化した東電の賠償や除染といった費用の増加に歯止めを掛けようとした様が見えてきた。そうした検証は時を経ても、なお、価値があるはずだ。探ってみたい。
(1)廃棄されていた「極秘資料」
事故から2年という日を目前にした2013年3月7日。首相官邸4階の大会議室で、政府の復興推進会議と原子力災害対策本部(原災本部)の合同会合があった。その議事録の「抜き書き」が筆者の手元にある。3人の大臣と原子力規制委員長の発言を切り取っている。会議に関わる官僚がつくったものだろう。興味深いやりとりだ。抜粋する(肩書は当時。マルガッコ内は筆者が補った)。
根本(匠)復興大臣
避難指示の解除に向け、線量水準に応じて講じるきめ細かな防護措置の具体化について、原子力災害対策本部で議論を行い、年内を目途に一定の見解を示していただくようお願いします。検討は本分野に専門性を有する原子力規制委員会が科学的・技術的な見地からの役割を果たしていただくようお願いいたします。
田中(俊一原子力)規制委員長
ただ今の復興大臣のご発言は、福島県の住民の方々にとっても大変重要な内容だと認識しています……当委員会として、しっかりと取り組んでいきたいと思います。
石原(伸晃)環境大臣
田中委員長もご発言されましたが、原子力規制委員会の専門的な知見を活用しつつ、関係省庁がしっかり連携して取り組むことが必要です……。
茂木(敏充)経産大臣
客観的な線量基準を出して貰わないと、なかなか帰還が進まない。除染もそれによってずいぶん量などが変わってくるので、地元の要請をしっかりと受けとめて、検討を進めなければならないと考えています。
なんだか台本の読み合わせのような感じがしないか。事務方の官僚たちの入念な事前調整を伺わせる。
この「抜き書き」は、福島県伊達市の市議・島明美さんが、政府に対する情報公開請求で得た「線量水準に応じた防護措置のあり方に関する関係課長打ち合わせ」(以下、「関係課長打ち合わせ」)という長い名前の会議資料の中にあったものだ1。その「抜き書き」部分のA4・2枚をスキャンして下に貼る。


※太字・下線は筆者が施したものではなく、この「抜き書き」の作成者による。
実は、筆者がまだ朝日新聞の記者をしていた約10年前、この「関係課長打ち合わせ」資料を、政府に対する情報公開請求で入手し、朝日新聞の言論サイト「論座」で内容を詳報した(2016年2月26日)2。ただ、筆者は5年前に朝日新聞を辞めたので今回、資料の再利用ははばかられた。それで改めて規制委などに情報公開請求をしたのだが、廃棄済みといった理由で不開示決定を受けた。
もうダメかとあきらめかけた時、10年前の私の記事を読んだ島さんが、ご自身の調査のため情報公開請求をして同じ文書を入手していたことを偶然、フェイスブックを通じて知った。早速、島さんに連絡をとり、提供をお願いすると快く承諾し、そのファイルを送ってくださった。
資料は全部で152ページあった。2013年春から夏にかけて複数回開かれたこの「打ち合わせ」で使われたものだ。多くに「対外厳秘」「取扱注意」の文字が付されていた。
再読すると、たくさんの発見があった。
資料によると、この打ち合わせに参加したのは、復興庁や環境省、原子力規制委員会の事務局である原子力規制庁、それと内閣府原子力被災者支援チームの官僚たちだ。その資料からは、毎回、熱心に議論していたことが分かった。
ところで、内閣府原子力被災者支援チームって何だろう? 筆者はずっと原発関連記事を書いてきたが、その存在を気にとめることはなかった。実際、あまり報道されてこなかった。今回調べてみて、この支援チームが事故処理の「要」になっていたこと、また、経産省と表裏一体の関係にあることを知った。
(2)避難政策担う経産省「別動隊」
この支援チームのことを、「関係課長打ち合わせ」資料を読み込む前に整理しておく。支援チームがこの「打ち合わせ」にも深く関与していたからだ。どんな人員・体制で、どんな役割を担ったのか。
復興庁の東日本大震災の教訓継承サイトにあった「復興政策10年間の振り返り」によると、東電福島第一原発における緊急事態の発生を受け、2011年3月11日午後7時過ぎ、政府として対応を指揮する原子力災害対策本部(総理が本部長)が設置された。
さらに同年3月29日、同本部の下に内閣府原子力被災者支援チームが置かれた。その役割は、「避難区域の設定及び避難者の支援」などのほか、「内閣府(原子力防災担当)とともに………原子力災害対策本部の『運営を担当』している」とあった。事務局員は「計30人程度」で、「同事務局の職員には経済産業省、環境省、厚生労働省、文部科学省などの様々な省庁の職員が充てられた」と記されている3。
もっとも、早い段階で経産官僚が支援チームの人員の多数を占めた。例えば、朝日新聞の2017年3月8日の記事は、支援チームについて「経産省の出向者で構成され、福島の首長らと協議しながら避難指示の設定と解除を決める」と報じた。支援チームを「経産省の出先機関」とか「経産省の別動隊」とみなす声もあった456。
支援チームの設立初期において事務局長補佐を務めた経産官僚の菅原郁郎氏は2011年9月、政府のとある会議で、設立経緯を語っている78。「事故は長期戦になるということで、3月29日に原災本部の所掌事務のうち、いわゆるオフサイト(筆者注:発電所の敷地外の意味)に専念するチームとして結成されました」
菅原氏は当時の活動についても語った。「炉の状況からみて、今後水素爆発等は起こらないという評価が下されましたので……区域の一部見直しに現在着手しております……緊急時避難準備区域につきまして、現在解除の方向で市町村と調整を行っています」
表向きは内閣府の「看板」を掲げるが、経産官僚が実際には大多数を占める原子力被災者生活支援チームが、避難区域等の見直しに深くかかわっていた9。原発を推進してきた経産省が、原発事故の処理も仕切っていたことになる。氏が説明に使った資料のスクショも下に貼る。なお、菅原氏は後に経産省事務方トップの経産事務次官に出世した。

※末尾に「①②は経産大臣が……主として担当」とある。
環境省が担った除染についても整理しておく。当初、環境省は航空機を使って調べた空間線量をもとに年5ミリシーベルト以上の地域で除染を行う考えだった。それが、細野豪志・環境相兼原発担当相(当時)が2011年10月2日、福島県知事との会談で年1ミリシーベルト以上も国の責任で除染すると表明した10。こうしたこともあって、住民の多くが年1ミリシーベルトを「安全の基準」ととらえた。
一方、2011年8月に議員立法でできた除染特措法は、環境省が実務的に立法作業を担い、国が要した除染費用を東電に請求できる「求償規定」が定められた。つまり除染費用を東電が負担する。なので細野氏の発言は、東電の損害賠償や経営改革を支援する立場になった経産省11にとって大変な衝撃だった。
経産官僚に聞いた。「想定外の発言。あれで除染地域が広がり、費用の桁が変わった」。考えてみると、除染する面積が広がれば除染費用ばかりか、除染土を保管する中間貯蔵施設の費用も増える。加えて除染に時間がかかることで避難指示の解除に至る時間も延び、損害賠償もさらに増えてしまう……12。
「1ミリシーベルトの呪縛」。関係者の中で、そんな苛立ちの声が高まった13。「関係課長打ち合わせ」はそんな情勢のもとで開かれた。主導したのは、経産官僚が多数を占める支援チームだった。
(3)空間線量だと推計が「過大」に
「関係課長打ち合わせ」の資料を読み込んでいきたい。
「打ち合わせ」の初回は2013年4月4日。冒頭の「3大臣+原子力規制委員長」のやりとりから約3週間後のことだ。関係省庁の担当課長らが「きめ細かな防護措置」を具体的に練り始めた。
この日使われた文書の一つは、「ミッション」の一つとして、「被ばく線量の『実測値』に基づく防護措置の考え方を示す」として、「空間線量等による推計値/ガラスバッジ(筆者注:身につけて持ち運ぶ小型の個人線量計の一種)等による実測値」といった「主な論点」を示した。
下にその部分をスクショし、貼る(この後も話題ごとに該当部分をスクショして貼る)。思うに、最初から個人線量計を活用する「結論」を描いていたのではないか。

「関係課長打ち合わせ」のメンバーらは、この年の4月下旬から5月にかけ、チェルノブイリ原発の事故対応を調査するため、分担してロシアやウクライナに出張した。6月17日の3回目の会合には、その成果と言える「チェルノブイリ原発事故に関する中間調査レポート(たたき台)」が出された。
その中には、チェルノブイリ原発事故と東電原発事故の線量の推計方法の比較があった。東電福島第一原発事故の推計は、「屋外8時間」「建物は木造家屋」といった「仮定」をもとにしており、「実効線量を『単純』『保守的に』推計」しているとした。日本のやり方だと、被ばく線量が過大に出てしまっているというのだ。

4回目の6月28日。「『場の線量』から『個人の線量』を重視する防護措置の検討について」と題した文書が出された(文書の日付は5月9日)。「検討の方向性の確認」として、「個人の実際の被ばく線量は、一般に、空間線量から推計したよりも低く」などとして、「早ければ来年(2014年)3月にも行われる避難指示の解除、住民の帰還に向け、『場の線量』から『個人の線量』に着目して……作業を行うことが必要」とした。

※黄色い下線は筆者が引いた
福島県内における、空間線量をもとにした平均値と、ガラスバッジと呼ばれる個人線量計で測った線量の平均値を比較した資料もあった。例えば、二本松市ではガラスバッジの方の値が「空間線量の約36%」だったと指摘。同様に郡山市で約24%、福島市で約22%と、ガラスバッジで測った値は、空間線量のそれよりも、かなり低くなるというデータを示した。

日付が不明だが、「『放射線被ばくに係る安全・安心対策の基本的方向』取りまとめイメージ」と題した文書もあった。「除染・避難に依拠した緊急的な対応から、人に着目したきめ細かな対応の必要性」を強調していた。費用負担の大きな除染や避難を早く終わらせたいのだな、と筆者は読んだ14。

※黄色い下線は筆者が引いた
「関係課長打ち合わせ」の終盤に出されたと思われる「安全安心対策(仮称)の流れ」と題した文書には、今後のスケジュールとして、「11月 検討Tで関係省庁の対策案全体を評価 原子力規制委員会での対策案全体の評価を了承」などとあった。
官僚たちが描いた、そうした「シナリオ」に近い形で、その後、コトは進んだように見える。

(4)「個人線量計で測定を」と規制委が提言
原子力規制委員会は2013年9月17日、有識者を交えた「帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム」で、帰還する住民の放射線防護の議論を始めた。前述の「安全安心対策(仮称)の流れ」に出てくる「検討T」は、この「検討チーム」のことだろう。これまでの「関係課長」らによる水面下での議論が、「公」になされることになった。
検討チームで使われた資料類は、事前に「関係課長打ち合わせ」で整えられていたはずだ。例えば、先に「チェルノブイリ原発事故に関する中間調査レポート(たたき台)」のことを書いたが、中身がほぼ同じ資料(タイトルは「チェルノブイリ原発事故に関する調査レポート」と直されていた)が、この検討チームの初回会合に出された。
こうして規制委の検討チームは急ピッチで議論を進め、2013年11月11日、「帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方」(以下、「基本的考え方」)と題した提言案をまとめた。帰還後の住民の被ばく線量の評価は「個人線量を用いることを基本」とし、その把握のため、「個人線量計等を用いてきめ細かく測定する」などとした。これを規制委も同月20日に了承した1516。
本稿の冒頭で紹介した復興大臣からの「年内を目途に」という期限に間に合せるため、急いだのだろう。新聞各紙は「被曝基準を実質緩和」などと報じたが、例えば日本経済新聞は「これを受けて政府は来春にも一部地域で避難指示の解除を目指す」と次の手順まで伝えた17。
すこしだけ時間を戻すと、この間、除染の状況を検証していた国際原子力機関(IAEA)の調査団が事故による汚染地域の環境回復のための助言をまとめている。10月21日、環境省から概要が公表された18。2つの指摘を転記する。
「政府は、人々に年間1ミリシーベルトの追加個人線量が長期の目標であり、例えば除染活動のみによって、短期間に達成しうるものではないことを説明する更なる努力をなすべきである」
「環境回復の決定を支援するために、個人線量計で測定されるような、個人線量の活用に向けて引き続き活動することが必要である」
実にタイミングよく避難指示の早期解除を促している。先に書いた「安全安心対策(仮称)の流れ」に、「国際シンポジウムの開催」とあったが、そうした類の「催し物」と筆者には思えた19。
こうして規制委の「基本的考え方」も取り込んだ閣議決定「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」(本稿の「下」でも書く)を経て、政府の原子力災害対策本部は2014年4月、福島県田村市の都路地区の一部に出していた避難指示を解除した。原発事故から約3年。避難指示区域で初の解除だった。
ここを皮切りに避難指示解除の動きが続き、一時は「解除ラッシュ」と報じられた。そして現在では、放射線量の高い「帰還困難区域」を除く全ての地域の避難指示が解除された。
帰還した住民の放射線防護に個人線量計はどれだけ役立っているのか。筆者は朝日新聞の記事データベースなどで調べたが、個人線量計が役立っているという記事を見つけることはできなかった2021。
(5)「とにかく解除を前に進めたかった」
そもそもの疑問が筆者にはある。規制委は避難指示解除に向けて、有識者を交えた検討チームで議論し、個人線量計の活用をうたう「基本的考え方」を定めたが、これは規制委がするべきことだったのか。
「基本的考え方」の案を朝日新聞が報じた際、次のような解説が付けられていた。「政府は住民の帰還を促すために追加被曝の目標を緩和したいという意向があった。このため、政府は規制委に科学的な立場から議論してもらい、お墨付きを得たいという思惑があった」(2013年11月9日)22。
避難指示を早く解除したい「勢力」に、規制委はうまく使われたのではなかったのか?
筆者は2026年7月上旬、原子力規制委員会と原子力規制庁に向けて、「関係課長打ち合わせ」や「基本的考え方」に関して10項目の質問を同庁広報室に送った。細かい事柄はともかく、最も聞きたかったのは次の点だ。「『基本的考え方』は、安倍内閣(当時)の避難指示解除・帰還政策に『お墨付き』を与えたのではないか?こうした役割は規制委に期待されたことだったのか?」
月末までに返答を、とお願いしたところ、きちんと月末に同庁広報室よりメールで回答を得た。
しかし、その回答は10項目中4項目について「『関係課長打ち合わせ』に関する文書は……廃棄済みで不存在のため回答することは困難」とするなど、多くが事実上の門前払いだった。
筆者が最も聞きたかった前記質問への答えはこうだ。とても巧妙に答えをはぐらかされた気がする。
「『基本的考え方』については、原子力災害対策本部の一員として、関係省庁の『帰還に向けた安全・安心対策』の案について科学的・技術的な検討を行うことを要請されたため、放射線防護に関して専門的な知見を有する立場から科学的・技術的な検討に基づき考え方を示したものです」
他方、筆者はこの「関係課長打ち合わせ」に参加していた官僚の一人に別途、取材できた。以下、要点をまとめる。率直に語ってくれた。
「とにかく避難指示解除を前に進めたかったんです。避難が長引いてコミュニティが壊れてしまうのを危惧しました。帰りたい人は帰れるという状況を作りたかったのです。避難指示の解除を早くできたら結果として除染・賠償費用を減らすことにつながりますが、付随的な話です」
「(解除の基準とされた空間線量の)20ミリシーベルトは、リスクとしては十分低いのです(筆者注:この方の認識)。ただ、当時、人々の間に1ミリシーベルトが『安全の基準』だという認識ができてしまい、なかなか帰還が進まない状況にありました。一方、個人線量計で計れば空間線量が実態に即していないことが分かります。つまり空間線量に基づくと必要以上に除染しないといけなくなります。結果として帰還が遅れてしまいます」
「この『関係課長の打ち合わせ』を主導したのは内閣府原子力被災者支援チームです。確かに経産省からの出向者が多かったです。ただ、この打ち合わせに決定権はなく、正式決定はあくまで原子力規制委員会です。課長たちは案を作るまで、です。みな、真摯に考え、取り組んでいました。経産省の都合の良い方向に誘導されたということはありません」
◇
経産省・支援チームが働きかけた先は規制委だけではなかった。本稿(下)でそれを描く。
次の記事
経産省は原発事故処理の「幕引き」を図った?(下)――賠償・除染・東電負担に「歯止め」狙う 2013年の政策形成
(6)資料・脚注
- 島明美さんは情報公開請求を駆使し、政府の放射線防護のあり方を問う論考を発表してきた。例えば、高エネルギー加速器研究機構の黒川眞一名誉教授との共著で「住民に背を向けたガラスバッジ論文——7つの倫理違反で住民を裏切る論文は政策の根拠となり得ない」(岩波書店「科学」、2019年2月号https://www.iwanami.co.jp/kagaku/201902-kurokawa-shima.html)などがある。 ↩︎
- その私の記事「『被曝線量の長期目標』はいかに実質緩和されたか 情報公開請求で朝日新聞に開示された『極秘資料』を読み解く」は以前、朝日新聞の「論座アーカイブ」で読めたが、朝日新聞はそれを2026年7月末に閉鎖してしまった。ただ、筆者の単著「原発時代の終焉 東京電力福島第一原発事故10年の帰結」(緑風出版)に記事を収めている(P116~)。 ↩︎
- この復興庁の「復興政策10年間の振り返り」には、原子力被災者生活支援チームの体制・人数に関して、「事務局:事務局長、事務局長補佐、事務局員(計30人程度)」のほか、「事務局長補佐ほか151人(本部事務局との兼務含む人数。5月9日時点)」との記述があった。また、「令和5年3月現在、経済産業省福島復興グループの職員が兼任しており、福島復興推進グループ長(経済産業省局長級)以下、約80人程度の体制となっている」とも記されていた。https://www.reconstruction.go.jp/files/user/topics/main-cat1/sub-cat1-22/20230829_05_chapter2.pdf ↩︎
- 筆者は今回、内閣府原子力被災者生活支援チームの人員の推移や出身官庁の内訳などが分かる資料について関係省庁に情報公開請求をしたが、「作成も取得もしておらず」などとして、不開示決定通知を受けた(取材も受け入れてもらえなかった)。ただ、次の脚注に記すが、内閣府は人数や出向者数を国会議員には明らかにしたようだ。 ↩︎
- れいわ新選組(現・いのちの党)の天畠大輔・参院議員は2026年5月29日、参議院の特別委員会で、次のように指摘した。「内閣府の説明によれば、現在の人員は八十六名で、うち経産省からの出向者は七十二名に上ります。また、原子力被災者生活支援チームの幹部に当たる審議官一名は経産省の大臣官房に属し、支援チームの担当大臣は経産大臣です。これは実質的に経産省の出先機関と言ってもいいと思うのです」「原子力を推進する経産省からの出向者が八割以上を占める部署が原子力災害の被災者支援をすることに違和感を覚えるのは私だけでしょうか」 ↩︎
- ネットで「原子力被災者支援チーム」を検索すると、まず内閣府のホームページで「原子力被災者生活支援チーム:外部リンク(経済産業省ホームページ)」(https://www8.cao.go.jp/genshiryoku_bousai/genbou_gensai/4_keisansho_gaibu.html)が出てくる。「外部のウェブサイト(経済産業省ホームページ)に移動します。よろしいですか。」との表示に従い、「原子力被災者生活支援チーム」をクリックすると、経産省のウェブサイトに移る。ここに避難指示関係の資料が収められている。https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/kinkyu.html ↩︎
- 元毎日新聞記者の日野行介氏は菅原郁郎氏に直接取材し、その際のやりとりを岩波新書「福島原発事故 被災者支援政策の欺瞞」(2014年。P144~)に書いている。筆者も今回、菅原氏にメール等で取材を申し込んだが、返答はなかった。なお、日野氏は同書の中で、原子力被災者支援チームについて「内閣府の看板を掲げているものの、実質的に経産省の別動隊である」(P190)と指摘している。 ↩︎
- 原子力委員会の新大綱策定会議(第6回)から。https://www.aec.go.jp/kaigi/senmon/sakutei/siryo06/giji06.pdf ↩︎
- 「これまでの避難指示等に関するお知らせ」は経産省のホームページにある。https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hinan_history.html ↩︎
- 細野豪志氏は自著「東電福島原発事故 自己調査報告」(徳間書店、2021年)で、この間の経緯ついてこう記している。「私が懸念したのは、1mSv(ミリシーベルト)を除染の目標とすることで、健康の基準や帰還の基準と混同されることだった。その懸念を伝えても、福島県は譲らなかった。佐藤雄平知事は私との対談の中で『当時、7000人の子供たちが避難した』ことを指摘し、『子供たちのために1mSvを目標にする必要があった』と語っている。除染に希望を託す福島の立場は痛いほど分かった。このままでは除染作業の開始が遅れてしまう。我々は見切り発車する形で『総合的・長期的な目標』という留保を付けて1mSvという目標を受け入れることにした」「2011年10月2日、私は福島県庁で佐藤雄平知事と会議し、1mSvを目標とすることを伝えた。その後、繰り返し健康の基準や帰還の基準とは明確に異なることを説明したが、どの程度それが伝わったか。次の日の新聞の見出しには1mSvという数字が躍った。これが除染という新たな巨大国家事業のスタートだった。除染事業にはこれまで総額3兆円以上が投じられている」(P294)。 ↩︎
- 2011年6月14日に閣議決定された「東京電力福島原子力発電所事故の原子力損害の賠償に関する政府の支援の枠組みについて」は、「政府は、これまで政府と原子力事業者が共同して原子力政策を推進してきた社会的責務を認識しつつ、原賠法の枠組みの下で、国民負担の極小化を図ることを基本として東京電力に対する支援を行うものとする」としている。具体的には「原子力損害が発生した場合の損害賠償の支払等に対応する支援組織(以下『機構』という。)を設ける」「機構は、原子力損害賠償のために資金が必要な原子力事業者に対し援助(資金の交付、資本充実等)を行う。援助には上限を設けず、必要があれば何度でも援助し……原子力事業者を債務超過にさせない」「政府は、援助を行うに先立って原子力事業者からの申請を受け、必要な援助の内容、経営合理化等を判断し、一定期間、原子力事業者の経営合理化等について監督(認可等)をする」などとした。https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/taiou_honbu/pdf/songaibaisho_111003_05.pdf ↩︎
- 技術・産業評論家の森谷正規氏による「1ミリシーベルトの呪縛」(エネルギーフォーラム新書、2012年)は、細野氏の1ミリシーベルト発言に関して次のように記した。「1ミリシーベルト以上にまで除染する地域を広げると、一体、費用はどこまで膨らむのか。福島県はほとんど全域になり……茨城、群馬、栃木にまで広がります。その費用は、予定の十倍以上にも膨らむのではないか。中間貯蔵施設の建設費だけでも数兆円とも言われます……その費用は、東京電力に負担させるのか。あまりに巨額であり、東京電力は不当であるとして裁判に訴えることもありえると指摘されています」(P220) ↩︎
- 月刊誌「エネルギーフォーラム」の2013年12月号は、「福島復興加速に『1mSv』の見直しを!」という特集を組み、「1mSvの呪縛を乗り越え被災者の早期帰還を」といった識者の論考を載せている。 ↩︎
- この「関係課長打ち合わせ」の「『放射線被ばくに係る安全・安心対策の基本的方向』取りまとめイメージ」の中に記された「講じるべき措置の概要」は次の5点を挙げている。「①実際の被ばく線量の正確な把握を起点とし、②実際に被ばく量を減らす対策、③リスクの正確な理解や④安心な生活の確保につながる取り組み、⑤①から④までの対策を継続して強力に進める体制の構築等、今後関係省庁が連携して、講じるべき措置の基本的な流れ。」
これに対して、原子力規制委員会が2013年11月に了承した「帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方」は、国の取り組みとして、次の①~④の対策を段階に応じてロードマップに示すべきとした。項目だけ以下に記す。①住民の個人線量の把握・管理②住民の被ばく線量の低減に資する対策③放射線に対する健康不安等に向き合った対策④放射線に対する健康不安に向き合ってわかりやすく応えるリスクコミュニケーション対策。
やはり、「関係課長の打ち合わせ」がベースになっていると筆者には思えた。 ↩︎ - https://www.nra.go.jp/data/000069185.pdf ↩︎
- 福島民報は2013年11月9日付朝刊で「避難している住民の帰還に向け、放射線防護対策の提言を検討している原子力規制委員会が、年間の追加被ばく線量が20ミリシーベルト以下であれば健康に大きな影響はないという見解を提言に盛り込む方針を固めた」とする記事を掲載している。それが本当の「狙い」だったのだろうか。 ↩︎
- https://www.nikkei.com/article/DGXNASDF20004_Q3A121C1MM0000/ ↩︎
- https://www.env.go.jp/content/900484107.pdf ↩︎
- 英語版には参加者リスト(ローマ字)があり、日本人と思われる名もあった。政官界の人事データを収めた「政官要覧」で調べると、経産省の官僚に同じ人物とおぼしき名前があった。https://www.iaea.org/sites/default/files/remediation-report-211013.pdf ↩︎
- 環境省は、「福島県内における個人被ばく線量把握事業を推進している」として、同省のホームページに「原子力災害影響調査等事業(福島県内における住民の個人被ばく線量把握事業:外部被ばく)報告書」などを掲載しているhttps://www.env.go.jp/chemi/rhm/riskcomu.html 。だが、報告書を読んでも、測定人数が少ないことなどもあり、個人線量計が帰還した住民のために役立っているとは、筆者には思えなかった。 ↩︎
- 東京新聞は2013年12月13日で「実態とかけ離れる『個人線量計』調査 7割の家庭で屋内に置きっぱなし 本紙が伊達市で実態解明」との記事を出した。それによると、個人線量計を使った被ばく調査が行われた伊達市の月舘町(つきだてまち)を記者が二日間かけて回り住民にヒアリングしたが、「訪ねても訪ねても線量計は居間や廊下の壁に家族分がまとめてつるされていた」といった状況だった、という。https://www.tokyo-np.co.jp/article/236234 ↩︎
- 当時、原子力規制委員の一人だった更田豊志氏(後に委員長に就任)は2013年8月の規制委で、「帰還に向けた安全・安心対策委関する検討チーム」の設置について、こう語った。「規制機関の本来の役割からはかなり踏み出したものであるという認識は必要であろうと思います」「検討チームの名称に『安全・安心対策』とあるのですけれども、安心対策というのは、推進のための方向活動を指す向きもあって、今回は帰還に向けたと目的が明確になっていますし、関係省庁の協力を得る活動でもありますので、これはこれで理解はできるのですけれども、私たち規制機関が『安全・安心対策』という言葉を用いる場合には十分な注意を払う必要があります」https://www.da.nra.go.jp/view/NRA001000654?contents=NRA001000654-004-001#pdf=NRA001000654-004-001 ↩︎
(7)小森敦司さんプロフィール
小森敦司(フリージャーナリスト)
1964年生まれ。上智大学法学部卒。1987年に朝日新聞社に入社、経済部やロンドン特派員、エネルギー・環境担当の編集委員などを経て2021年に退社、フリージャーナリストに。著書に「日本はなぜ脱原発できないのか」「『脱原発』への攻防」(いずれも平凡社新書)、「原発時代の終焉」(緑風出版)など。2024年、行政書士事務所を開業。➡️ 著者の記事一覧
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