原子力市民委員会 特別レポート5
『原発の安全基準はどうあるべきか』
(近日発表予定)

 

 原子力規制委員会(以下「規制委」と略記)は「実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方について」(以下「新規制基準の考え方」と略記)という文書を2016年6月29日に策定し8月24日に改訂した。その文書の目的は、2013年7月の新規制基準施行以来、既設原子力発電所(以下「原発」と略記)の適合性審査を進行させ、実質的に原発の再稼働を認可しつつある規制委が、各地の市民が提起している原発訴訟に対抗して、再稼働を推進するための論理を明示して、被告である電力会社や政府機関を助勢し、かつ権威づけた文書をもって裁判官たちに圧力をかける役目を果たしている。
 「新規制基準の考え方」の内容は、市民の目から見て、原発という巨大なリスクを孕むシステムの安全を十分に考慮したものになっているとは言い難い。むしろ、既設原発に後付けの設備を加えられる範囲の改善で妥協している。福島第一原発事故以後の原子力規制は、原発の安全性追求において従前の方針を根本から変更することが期待されていたが、現状はそうではなくて、リスクを軽視することによって現実を容認する傾向が強い。規制委は、発足直後には慎重であったが、時を追うにつれて現状追随の度を増しつつある。
 本レポートは原発の安全性に係る諸問題を基本から考え直し、原発のあるべき安全基準について考察し、そして提言するものである。

筒井 哲郎(原子力市民委員会 原子力規制部会 部会長)
―「まえがき」より

 

【目次】(予定)


   まえがき
   序 章 原発プラントの社会的不整合
   第1章 再稼働を推進する新規制基準適合性審査
    1.1 設計基準地震動、津波の過小評価
    1.2 火山灰の影響評価
    1.3 非常用取水設備の耐震クラスCの誤り
    1.4 不確実さに満ちた過酷事故対策
    1.5 水蒸気爆発と格納容器破壊の危険性
    1.6 水素爆発の危険性
    1.7 蒸気発生器の耐震性評価不正の疑い
    1.8 クロスチェック解析をしない杜撰な審査
   第2章 新規制基準の不徹底
    2.1 特定重大事故対策設備の期限延期
    2.2 原発の「テロ」・武力攻撃対策の現状
    2.3 免震重要棟の必要性
    2.4 40年運転規制と老朽化
    2.5 古い原発はなぜ危険か
    2.6 難燃性ケーブルへの変更
   第3章 規制基準自体の欠落または不足な項目
    3.1 規制基準自体に欠落している項目
    3.2 立地審査指針と住民被ばく問題
    3.3 繰り返し地震を想定した耐震基準に
    3.4 水蒸気爆発・水素爆発の防止に労働安全衛生規則を適用
   第4章 原子力防災計画
   第5章 規制組織の振る舞い
    5.1 規制委員会の判断基準、行政機関としての振る舞い
    5.2 検査制度の見直し
    5.3 不明瞭な安全目標と鹿児島地裁の事実誤認
   第6章 原発に関わるリスク評価の虚妄