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2024/3/15
 提言:「福島第一原発の廃炉について「汚染水発生量ゼロ」の目標を明確化し、燃料デブリ取り出しを中止した上で、現在の位置での長期遮蔽管理を求める」を政府・東京電力に提出new025_04

2024/2/20
 Press Conference: On Shaky Ground: Japan’s Nuclear Power Policy and the Notonew025_04                       2024/2/9
 連続オンライントーク 「原発ゼロ社会への道」2024 第3回    液体放射性廃棄物を海に流し続けることは許されるのか 開催のお知らせnew025_04                               2024/1/28

 【2/8(木)】第36回 原子力市民委員会「 構造的暴力という視点からみる原発事故ー “風評加害”という言葉のもつ意味 」                            2024/01/19                                                                           【1/23(火)】第2回 核のごみの最終処分や中間貯蔵の問題にどう向き合うか  連続オンライントーク「原発ゼロ社会への道」2024 開催のお知らせ                  2024/01/12                                                                            【1/18(木)】緊急オンラインシンポジウム「能登半島地震から問い直す原発稼働の危険性」開催のお知らせ                         2024/01/11                                                                               リーフレット「これでいいの? 日本のGX ~エネルギー基本計画の改定に向けて」が完成しました!                                               2024/01/04

 【1/11(木)】第1回 これでいいの? 日本のGX~エネルギー基本計画の改定に向けて  連続オンライントーク「原発ゼロ社会への道」2024 開催のお知らせ        2023/12/14
 声明: ALPS処理汚染水の海洋投棄を即時中止し、 デブリ取り出しと非現実的な中長期ロードマップを見直し、福島第一原子力発電所の「廃炉」のあり方を公開・透明な場で検討するべきである                            2023/12/05
 【12/14(木)】第35回 原子力市民委員会「 地層処分に適地はない 」—高レベル放射性廃棄物政策をめぐる‟不都合な真実”                   2023/11/28
 ICRP勧告について学び検討する連続ウェビナー 第6回          2023/11/21
 [CCNE後援イベント]【12/16-17(土日)】第9回公害資料館連携フォーラムin福島 2023/11/16
 【11/27(月)】第5回 新潟県は、なぜ福島原発事故「3つの検証」を骨抜きにしたのか ――市民検証委員会の意義と柏崎刈羽原発再稼働の問題 連続オンライントーク「原発ゼロ社会への道」2023 開催のお知らせ
2023/10/24
 【10/30(月)】第34回 原子力市民委員会「処理汚染水の海洋投棄では何も解決しない福島第一原発の “廃炉”の過酷な現実」
2023/10/19
 [CCNE協力イベント]【11/3-4 (金土)】IISORA 第11回シンポジウム 福島
2023/10/18
 【11/3-4】「放射線防護の民主化フォーラム 2023-2030」with 飛田晋秀写真展、減思力展、原子力災害考証館furusato ―福島の経験を共有し、放射線の影響からの‟身の守り方”を市民の視点で問い直す  ※開催の経緯と趣旨はこちらから
2023/10/14
 ICRP勧告について学び検討する連続ウェビナー 第5回
2023/9/9
 ICRP勧告について学び検討する連続ウェビナー 第3回
2023/8/26
 Urgent Statement: “Decision to start releasing ALPS-treated radioactive water into the ocean ignoring the agreement with the interested parties is the worst means” (8/22付「緊急声明」英訳版)
2023/8/22
 緊急声明「関係者との合意を無視した海洋放出決定は最悪の選択である」
2023/8/18
 ICRP勧告について学び検討する連続ウェビナー 第2回
2023/8/18
 【8/30(水)】第33回 原子力市民委員会「風雲急を告げる高レベル放射性廃棄物の処分問題」
2023/8/14
 Commentary: The IAEA Comprehensive Report does not provide a “scientific basis” for the oceanic release of ALPS-treated radioactive wastewater.(7/18付「見解」英訳版)
2023/8/04
 【8/10(木)】第4回 不可視化される原発事故の教訓と責任 ~文部科学省の原子力・放射線副読本と原発事故の教訓を伝える施設の展示の特徴 連続オンライントーク「原発ゼロ社会への道」2023 開催のお知らせ
2023/7/24
 【協力イベント】シンポジウム 原子力と核 私たちは管理できるのか   2023/7/21
 ICRP勧告について学び検討する連続ウェビナー 第1回           参考:ICRP(国際放射線防護委員会)への要請レター提出とその後の経緯
2023/7/18
 見解: IAEA包括報告書はALPS処理汚染水の海洋放出の「科学的根拠」とはならない 海洋放出を中止し、代替案の実施を検討するべきである
2023/7/15
【7/23(日)】公開フォーラム「いま改めて、処理汚染水の海洋放出の問題を考える」
2023/6/27
【7/4(火)】第3回  原発事故による土壌と食品汚染の現況と今後のあるべき規制 連続オンライントーク「原発ゼロ社会への道」2023 開催のお知らせ
2023/6/14
【6/20(火)】第2回 環境法制に組み込まれた原発規制 ── あらためて原子力基本法2012年改正の意義を考える 連続オンライントーク「原発ゼロ社会への道」2023 開催のお知らせ
2023/5/19
【5/28(日) in 鹿児島市】緊急報告集会「政府の原発回帰政策と川内原発延長運転の危険性 福島原発事故の教訓は生かされているのかー」
2023/05/13
 『 今こそ知りたい エネルギー・温暖化政策Q&A(2023年版)』 ―― 政府GXによる 原発回帰は、国民負担が増すだけで、脱炭素にもエネルギー安定供給にもつながらない
2023/4/22
【4/27(木)】第 1 回 満身創痍の原子力基本法 連続オンライントーク「原発ゼロ社会への道」2023 開催のお知らせ
2023/4/16
「GX脱炭素電源法案( “原子力産業救済法案” )の成立を許さない」研究者・専門家 緊急アピールの呼びかけ≪〆切5/15までに延長!≫
2023/4/11
Open Letter regarding the ICRP2023
2023/3/29
Open Letter to the G7 Ministers on Climate, Energy and Environment concerning over misleading reference to the forthcoming Communiqué
2023/3/18
【3/20(月)】「GX推進法案」を国会で通してはならない ―― 新たな国民へのツケ回しとなる法案の徹底検証 開催のお知らせ
2023/3/15
【3/26(日)】交流会「どうする?これからのエネルギー」 原発と火力、再エネのホントの話
2023/3/10
【3/21(火・祝)】オンライン公開シンポジウム 若い世代が語る 『原発事故について今伝え、話し合いたいこと』
2023/1/18
 声明: 国民の意見を聴かない岸田政権による原子力政策転換は許されない                          〜改めて国民への説明と熟議の場を設けよ〜を発表しました
2023/1/18
 原子力市民委員会 新体制のお知らせ
2022/1/10
 緊急リレートーク!「 岸田政権による原発回帰がもたらす10の問題 」                          開催のお知らせ
2022/12/21
 岸田政権による原子力政策の転換に関する声明 〜原発はなんの解決にもならず、                          問題を悪化させる〜を発表しました
2022/12/15
【12/21(水)】政府のGX(グリーントランスフォーメーション)で未来を守れるか 共同記者会見 開催のお知らせ 記者会見資料pdficon_s 

2022/12/15
【緊急記者会見】原子力小委員会の取りまとめの問題(主催:CNIC、協力:CCNE) 記者会見資料pdficon_s 
2022/12/15
[CCNE協力イベント]【12/19(月)】第5回 老朽原発の危険性 原子炉はなぜもろくなる? 予測は可能? 規制委審査は大丈夫?
2022/08/19
『原発ゼロ社会への道』(2022)発行のお知らせ
2022/06/8
 ALPS処理水の海洋放出関連設備の設置等に係る審査書案へのパブリックコメント文例集を公開しました
2022/03/04
 ロシア軍によるウクライナの原子力施設への武力攻撃に関する緊急抗議声明                         を発表しました
2021/12/13
 【12/15】緊急オンライン企画 “東京電力「ALPS処理水の                         海洋放出に係る放射線影響評価報告書」の問題点”開催のお知らせ

2021/12/13
 声明: 対策地域内廃棄物に含まれる高濃度PCB廃棄物の処理は                         拙速に進めるべきではないを発表しました 記者会見資料pdficon_s 
2021/6/1
 「トリチウム汚染水海洋放出問題資料集」を公開しました
2021/05/21
 【5/21(金)】環境省の除染土「再生利用」の“理解醸成活動”についての記者会見
2021/04/11
 福島第一原発のALPS(多核種除去設備)処理汚染水の海洋放出問題                         についての緊急声明(4/11の記者会見の様子)

 

2023年12月14日

声明:  ALPS処理汚染水の海洋投棄を即時中止し、
デブリ取り出しと非現実的な中長期ロードマップを見直し、福島第一原子力発電所の「廃炉」のあり方を公開・
透明な場で検討するべきである

                   

                 原子力市民委会                                                                                                                 座長 大島堅一                                                                                                                 委員 後藤政志 清水奈名子 茅野秀                                                                                   松久保肇 武藤類子     吉田明子

 

1.ALPS処理汚染水の海洋投棄は即時中止せよ   

 2023年8月からALPS処理水(トリチウム以外の放射性物質を含む汚染水)の海洋放出(以下、ALPS処理汚染水の海洋投棄とする)が開始された。現在の計画は、長期間にわたって液体放射性廃棄物を海洋投棄するものに他ならない。政府は、燃料デブリの取り出しや、原発事故発生後30~40年で福島第一原発の廃炉を完了することを海洋放出の理由にあげている。ところが、その福島第一原発には何をもって廃炉完了とするのかという基準すら決まっておらず、廃炉計画には全く現実性がない。ALPS処理汚染水の海洋投棄には道理も必要性もない。

 政府および東京電力は、「関係者の理解なくしていかなる処分も行わない」と福島県漁連に書面で約束していた。その約束を反故にし、多くの反対を強引に押し切るかたちで海洋投棄が開始された。海洋投棄開始には直前のプロセスにも大きな問題があった。本来、政府・東京電力は、海洋投棄の前に「年間放出計画」を関係者に丁寧に説明し、理解を得る必要があった。ところが、政府・東京電力は、「年間放出計画」を一方的に公表しただけで、その2日後には海洋投棄を始めてしまった。政府・東京電力は関係者との間の合意形成を全く行わなかった。

 ALPS処理汚染水投棄開始2ヶ月後の2023年10月25日には、増設ALPSで、配管の洗浄作業を行っていた複数の作業員が高濃度の放射能を含む洗浄廃液をかぶり被ばくするという事故が発生した。東京電力の説明は不十分で、いまだに不明な点が残されている。ALPS等による汚染水処理の現場で浮き彫りとなったのは、設備が安全に設計されているのか、安全な作業手順が確立しているのか、原子力規制委員会に東京電力を監視し、指導する力量があるのか、といった根本的な疑問である。これらはALPS処理の根幹にかかわる。

 ALPS処理汚染水の海洋投棄を直ちに中止したうえで、ALPS等の設備で大量の汚染水を確実に処理することができるのか、長期間におよぶ使用、運用が本当に安全にできるのか、改めて検証する必要がある。

2.放射能汚染の継続と求められる政府・東京電力の対応

 福島第一原子力発電所からは、放射性物質が大気や海洋にいまだに漏洩し続けている[1]。原発事故時には、放射性物質が漏洩しないよう、「止める」「冷やす」「閉じ込める」を達成しなければならない。にもかかわらず、事故後12年を経過してもなお「閉じ込める」ことができていない。それどころか、政府・東京電力は、これまでの放射性物質の漏洩に加え、ALPS処理汚染水を海洋投棄している。汚染に汚染を重ねる政府・東京電力の行為は許されない。

 加えて、政府は「ALPS処理水」を汚染水でないとして一種の言葉狩りを行ったり、海洋放出に対する批判や懸念をいわゆる「風評加害」であると断じて、国民、報道機関を萎縮させている。政府のこのような行いは、原発事故による汚染を否定し、政府、東京電力自身の加害責任を、被害者を含む国民(一般公衆)に転嫁するものである。悪質なデマが許されないことは当然であるとしても、実際の被害、風評被害ともに被害発生の責任は政府、東京電力にあり、被害者や国民にはない。

3.直ちに中長期ロードマップの見直しをすべきである

(1)汚染水発生の防止こそが必要

 2023年12月時点で、一日あたり約100立方mの汚染水が発生し続けている。政府・東京電力は、汚染水の海洋投棄を事故発生後の初期段階で目論んでおり、汚染水発生をゼロにする姿勢に欠けていた。汚染水対策として設置された凍土壁は当初から効果が疑問視されていたとおり、十分な効果を発揮していない。

 多方面から指摘されてきたとおり、原発建屋周辺の地下に遮水壁を構築すること、建屋地下内部からの水の漏出を止めること、デブリの空冷を行うことなど、汚染水発生防止のための抜本的対策を政府・東京電力は直ちに講じるべきである。これを確実に実施しない限り、汚染水の発生と漏出と周辺環境の汚染が続く。汚染水対策に要する期間が長引き、費用の増大も避けられない。

(2)デブリ取り出しは不可能

 原子炉からのデブリ取り出しは今のところ技術的見通しが立っていない。仮に一定量取り出せたとしても、核分裂性物質の保管場所を含め社会的に解決すべき課題が残る。したがって現時点でデブリ取り出しを急ぐ必要はない。ALPS処理汚染水投棄の理由となっているデブリ取り出しのための敷地確保も不要である。最優先するべきは、汚染水の環境中への漏出や投棄を最小限にすることである。また福島第一原発内の汚染水は、原子力市民委員会がこれまで提言してきたように、堅牢な大型タンクによる保管やモルタル固化による処分等で安定的に保管ないし処分するのが望ましい。

(3)中長期ロードマップの見直しと制度改革が不可避

 事故処理によって大量の放射性廃棄物が発生するとみられている。その最終処分方法は、現在、検討すらされていない。現状では、福島第一原子力発電所敷地内に長期間保管せざるをえなくなる可能性が高い。このような状況からすれば福島第一原発敷地内から全ての放射性廃棄物を運び出し、事故発生後30~40年のうちに福島第一原発を更地(グリーンフィールド)にすることは技術的・社会的に不可能である。

 現行の中長期ロードマップには、どのような状態をもって廃炉とするのか、廃炉完了の目安となる放射線量の基準すら定められていない。現行の中長期ロードマップの見直しは不可避である。

 福島第一原子力発電所の廃炉には、労働者被ばくと環境汚染のリスクが伴い、かつ非常に長い期間と莫大なコストを要する。被ばくと環境汚染、国民負担の最小化[2]を実現するには、廃炉プロセスを民主主義的コントロールの下に置かなければならない[3]。現行の廃炉体制を根本から改め、公開性と透明性を確保し、広く国民の声が反映される制度を構築する必要がある。その際、廃炉の技術的側面だけでなく、費用と費用負担を含む社会的側面についても十分な情報が開示され、検証可能にする仕組みが組み込まれるべきである。

[1] CNICブリーフ「福島第一原発は今も放射性物質を放出している―ALPS処理汚染水放出問題で考慮すべき新たな論点」https://cnic.jp/47439 [2] 原子力市民委員会が特別レポート2『核廃棄物管理・処分政策のあり方』(2015年)で提唱した核廃棄物管理に関する「核廃棄物の管理・処分のための技術的3原則」および「核廃棄物の管理・処分のための社会的3原則」を参照されたい。https://www.ccnejapan.com/?p=11502 [3] 開かれた場で公論を形成する試みの一つとして、福島大学の元学長などによって「復興と廃炉の両立とALPS処理水問題を考える福島円卓会議」が設置・開催されている。政府・東京電力は、まずはこのような場に積極的に出席するべきである。

                                                   以 上