「「ALPS 処理水取り扱いへの見解」についての補足」を掲載しました

2019年10月11日

「ALPS 処理水取り扱いへの見解」についての補足

原子力市民委員会 原子力規制部会

 私たちが10月3日に発表した「ALPS処理水取り扱いへの見解」(以下「見解」)について、SNSなどを含めて寄せられた意見、コメントなどを受け、以下の通り、原子力市民委員会としての立場をあらためて述べるとともに、モルタル固化について4点、大型タンクでの長期保管について1点を補足します。

1.原子力市民委員会の基本的立場
 原子力市民委員会は、汚染水を海中放出すべきではないということを従来から提言してきましたが、今回の「見解」では、既存の技術で十分実施可能な「長期陸上保管案」として、「大型タンク保管」および「モルタル固化」を提案しました。
 東京電力は、廃炉事業において、デブリの取り出しを大前提として、デブリの一時保管場所や、(必ずしも敷地内に設置すべきかどうか不明な)研究・訓練施設等の敷地の確保が必要だと説明していますが、原子力市民委員会としては、デブリの取り出し自体について見直すべきであると考えています。(詳しくは、特別レポート1『100年以上隔離保管後の「後始末」』2017改訂版をあわせてお読みください。)

2.モルタル固化:コンクリートとモルタルの違いおよび水との配合比率について
 今回の「見解」で、私たちは、ALPS処理水のモルタル固化を提言しましたが、SNSなどでは、モルタルについての基礎的な部分に誤解があるようなコメントも見受けられましたので、まず前提となることをあらためて整理します。モルタル、コンクリートと、その素材であるセメントの違いは以下の通りです。
●セメント:主成分は石灰石を焼成し粉末化したもの。砂や砂利と混ぜ、水と混和することでコンクリートやモルタルを作る
●コンクリート:水+セメント+砂+砂利、更に強度が必要な場合は鉄筋で構成する
●モルタル:セメント、水、砂で構成。目地や三和土(たたき)、外壁など基本的に強度を必要としない場所に使用する
 汚染水をモルタル固化する場合、一定の容積にどれだけの汚染水を固化できるかが重要となりますが、今回の「見解」は、以下のような一般的な配合比の例を前提として検討したものです。

つまり、1m3のモルタルには、270kg(≒0.27m3)の汚染水が含まれることになり、容積効率は、270/1,000(約1/4)となります。同様に、コンクリート固化の場合、容積効率は175/1,000(約1/6)となります。

3.モルタル固化:汚染水の蒸発について
 SNSなどでのコメントでは、モルタル固化に関して、水(汚染水)が蒸発するという指摘がありました。
 モルタル固化において、水はセメントと反応し、水和物としてモルタルの中に取り込まれます。水和反応に際して熱が発生しますが、それを考慮した上でも、モルタル固化に関わる汚染水の蒸発量は、わずかなものだと思われます。
(「見解」についての記者ブリーフィング資料pdficon_sのスライド21に示したとおり、水和熱により、モルタルの中心部で約30℃の温度上昇が数日間続くことが考えられますが、水和熱抑制剤を用いれば、約10℃の減温効果があり、モルタル表面における蒸発量は僅少と思われます。)
 そもそも、モルタル固化は、経産省の「トリチウム水タスクフォース」で検討された処分方法pdficon_sの一つであり、「タスクフォース」の案では「蒸発を抑制するために上部にカバーを設ける」ことが検討されています。さらに水封ベント(大気との通風管の途中で水をくぐらせる装置)を設置すれば、蒸発をさらに低減させることが可能です。

4.モルタル固化:廃棄物の総量について
 モルタル固化の場合、廃棄物の総量が増えること、(原子力市民委員会が示した)米国サバンナリバーの核施設に比べて、福島第一では、桁違いに多くなるのではないかという声もありました。
 2.で示したように、水の配合比率から、廃棄物としての容積が増えてしまうことは、原子力市民委員会としても認識しており、「見解」にもそのことを明示しています。
 サバンナリバーに関するレポート「SRS Liquid Waste Planning Process Rev.21 (Jan.2019)」pdficon_sによると、現在、6基ある最大12万m3クラスの廃棄物のユニットを2034年までに13基に拡大することが示されているので、サバンナリバーでも総量100万m3を超える規模の放射性廃棄物処分が、実際にすすめられています。

5.モルタル固化:実現性について
 「海水で希釈して海洋に放出するより手間がかかりそうなモルタル固化を、いまの東電に実行できるか。」という主旨の声もありました。
 モルタル固化自体は、既存の技術であり、経産省の「トリチウム水タスクフォース」でも選択肢として検討されたものですから、私たちは現実的な方法だと考えています。たしかに、1,000億円以上の予算が必要となると思われますが、東京電力が、現在、柏崎刈羽原発や東通原発の再稼働、東海第二の再稼働・運転延長への経済的支援などをすすめようとしていることを考えれば、それらに関わる予算や人的な資源を、まずは汚染水の処理に投入し、責任を持って対処すべ課題であると、私たちは考えています。

6.大型タンク長期保管:タンクの密閉性とスロッシングなどについて
 大型タンクでの長期保管について、「石油備蓄などのタンクは浮屋根式で、密閉できない」、「長期保管するとトリチウムが全量気化してしまう」、「地震の際には、スロッシングでタンクが破壊する可能性がある。タンク内に仕切りを大量に設置すると、溶接の際に、外周の金属が脆化するのではないか。放射線による脆化もある」という主旨のコメントもありました。
 私たちの「見解」では、汚染水のタンクは、(汚染水は原油のような低沸点可燃物を含むわけではないので)浮屋根式は採用せずに、水封管を通じて大気と繋がったドーム型とすることを前提に提案しています。なお、原油備蓄で使用される浮屋根式は密閉式であり、トラブル時に摺動部からの漏えいの可能性はあるとはいえ、ごくわずかです。
 また、タンク保管によりトリチウムが全量気化するというのは大げさであり、気化を懸念するとすれば、3.で述べたような水封ベントが設置されていない、現状の汚染水タンクについて考えるべきです。
 次に、スロッシング(地震等の外部からの長周期の振動により、タンク内の水が揺動すること)の対策は、内部に邪魔板等を入れて抑える方法が考えられますが、タンク本体に溶接する場合の「脆化」が問題になるのは板厚が厚い場合であり、溶接後に焼鈍等が必要になる可能性はあります。詳細設計の段階で、諸寸法と板厚、材質、強度を検討した上で決定するものと思いますが、脆化が問題となり、実現できないことはないと考えます。また、金属材料の放射線による照射脆化は、原子炉近傍の中性子による高放射線環境下の話で、トリチウムのような透過力の弱いベータ線では、全く問題ないと考えます。

 引き続き、みなさまからのご意見、ご助言などをいただきたく、よろしくお願いいたします。

以上

 
 

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