「原発ゼロ社会への道――新しい公論形成のための中間報告」を発表、脱原発実現のプロセスの全体像を示す

「原発ゼロ社会への道――新しい公論形成のための中間報告」
を発表、脱原発実現のプロセスの全体像を示す

 
原子力市民委員会(CCNE)では、2014年春に作成を目指している「脱原子力政策大綱」の準備資料として「原発ゼロ社会への道――新しい公論形成のための中間報告」を公表いたしました。

今後は、半年ほどかけて、各地で意見交換会や報告会などを開催し、幅広い方々との議論をふまえて、「脱原子力政策大綱」を作成していく予定です。

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原子力市民委員会は、7日、「原発ゼロ社会への道――新しい公論形成のための中間報告」(A4判、113ページ)を発表した。中間報告は、

●福島原発事故による被害の深刻さ、原発ゼロ社会を実現すべき理由、脱原発政策実現のための政治的
 条件、脱原子力政策大綱をどのような方法で作成するか(以上、序章)
●福島原発事故被害の全容と「人間の復興」(第1章)
●「ゼロ社会」実現に伴う難題・放射性廃棄物処理(第2章)
●「ゼロ社会」実現への具体的道筋(第3章)
●「ゼロ社会」になるまで残存する国内原発50基への規制基準や 法制度・組織のあり方(第4章)
 からなっている。

「市民委員会」は、今年4月発足。6月19日には、「原発再稼働を3年間凍結し、原子力災害を二度と起こさない体系的政策を構築する」ことを求める緊急提言、8月28日には、福島原発の汚染水対策に関する緊急提言を発表しているが、脱原発実現に向けた全体像を公表するのは初めて。中間報告は、福島原発事故の凄まじい被害をみれば、脱原発こそが必要で可能な選択だとし、原発利用にともなう「負の遺産を賢明に管理する社会」実現を目指すとする。

第1章は、福島第一原発からの膨大な汚染水流出、デブリ(溶解した炉心)の位置や原子炉の破損箇所も不明な現実、終わりの見えない「除染」などを指摘、「収束宣言」(2011年12月、野田政権)が「実態を無視」したものだとして、国が被害を過小評価し、「復興」の美名のもとで被ばくのリスクを伴う「帰還」を事実上強制していると、厳しく批判する。
法制定から14カ月後の今年8月末、復興庁がようやく発表した「原発事故子ども・被災者支援法」基本方針案については、基準線量を明確にしないまま支援対象地域を限定していることなど根本的な欠陥を指摘。被災者の基本的人権としての「被ばくを避ける権利」が守られ、被災者ひとりひとりの健康な暮らし、生きがいと希望を取り戻す「人間の復興」こそ、被災地復興の目標とすべきだとする。県にまかせず、国が責任をもつ統一的な健康管理と医療支援態勢を提言。また、収束作業や除染作業にたずさわる労働者については、生涯にわたる健康管理、補償、多重下請けによる賃金・危険手当の「ピンハネ」「中抜き」防止などの施策を急ぐべきだと主張している。

第2章は、放射性廃棄物を扱う。2万トン(うち、六ヶ所村に3千トン)に及ぶ使用済み燃料について 原則として現在の場所で暫定保管の後、直接処分という案を提示、六ヶ所村と東海村の再処理施設はすみやかに廃止することを提言している。プルサーマルはおこなわず、プルトニウムと回収ウランは「廃棄物」として処理するとしている。
最終処分場を六ヶ所村に集中することは、倫理的にも地元との協定からも不可能だが、全国の原発サイトなどへの分散にも技術的・社会的な問題があると指摘、高レベル廃棄物処分の難しさを認め、原発事業によって利益や損害を受けた関係者のみならず、広く国民の間で徹底した議論をするためのプロセスを示している。
「核のゴミ」処分や福島第一原発の事故処理にあたっては、①陸と海の環境汚染の最小化、②労働者と住民の被ばくの最小化、③無駄なコストをかけない国民負担の最小化――を原則として提示している。

第3章は、「原発ゼロ社会」を実現するための「行程」と方策を提案。その実現に向けた国民的合意プロセスのあり方を示しつつ、原発ゼロを実現する手順の基本的アウトラインを提示する。経済や電力需給に対する短期的影響の緩和、現行の原子力損害賠償制度の見直し、東京電力を始めとする電力会社の経営問題への対処についても提言している。さらに、化石燃料の大量消費や深刻な気候変動の問題を踏まえて、本格的な省エネルギーや再生可能エネルギーの導入を主軸とする「持続可能なエネルギーシステムへの根本的転換」が必須であるとし、そのための政策として「エネルギー転換基本法」(仮称)の策定と行財政改革の実行についても提言する。あわせて原発輸出問題における国際的な責任のあり方にも言及している。

第4章は、原発ゼロ社会を実現する過程で、50基に及ぶ既存の原発と関連施設に対する規制を扱っている。福島で経験したように、原発は、炉心損傷・爆発に至る過酷事故を起こし、修復不能な環境汚染を招く特殊な技術であり、交通機関や石油プラントなど他の技術と同様に扱ってはならないと指摘する。机上の計算はあてにならず「確率を使ったリスク評価で安全性を論じてはならない」と強調。「原発ゼロ」が安全を確実にする道だが、原発が現存する以上、その規制基準は、安全性を唯一の判断基準として「その時点で技術的に可能なすべての対策」を要求すべきだとしている。仮に原発を再稼働するのであればこのような厳格な規制基準の下に置かれるべきだが、7月に施行された原子力規制委員会・規制庁の「新基準」は欠陥だらけであり、安全の担保にはならないと指摘する。
安全性を高めるためには、基準を超える地震動による「残余のリスク」への注意義務、「立地指針」などの復活・強化、自然災害などで複数機器が同時に損傷をおこす「共通要因故障」を考慮した設計基準の作り直し、ECCS(緊急炉心冷却装置)や格納容器など安全に不可欠な設備設計の抜本的なやり直し、外部交流電源や計測器類の信頼性向上、などの対策が確立されねばならないと指摘している。

市民委員会では、この中間報告が、広く一般市民や地元住民、専門家、自治体関係者や政治家に読まれて国民的議論が起こることをめざし、全国各地での意見交換会等で市民の意見を聞き、原発立地・周辺自治体および事業者側からのヒアリング等も経て、「脱原子力政策大綱」にまとめ、2014年4月の発表を予定している。

以 上

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