日本でのICRP2023開催をめぐる ICRP(国際放射線防護委員会)への公開レターの提出とその後の経緯

日本でのICRP2023開催をめぐる ICRP(国際放射線防護委員会)への公開レターの提出 とその後の経緯

 

国際放射線防護委員会(ICRP)は2023年11月6~9日、国際シンポジウム ‟ICRP2023” を日本で開催する予定です。

福島原発事故後に適用された年間20 mSv基準は、ICRPの2007年勧告を参考に採用されました。放射線防護について検討するICRP2023の場に、福島原発事故の被災者や市民、そして事故後の状況を詳細に把握している日本の経験者が広く参加することは、2030年頃に基本勧告の改訂を予定し、それに向けた作業をおこなっているICRPにとっても有意義と考え、原子力市民委員会(CCNE)ではICRP2023の運営方法ならびに具体的なセッションを3つ提案する公開レターを4月8日に送りました。その後、ICRPからの返信に対し、5月4日、6月3日にもレターをメールにて送りました。

結論として、CCNEの提案は受け入れられず、CCNEとしては他団体と連携して、11月の同時期に福島市内で市民を主体としたシンポジウムを企画中です。またシンポジウムに向けて、学習の場となる連続ウェビナーを開催していきます。

 

  point 【2023年4月7日】CCNEからICRPに宛てた公開レター(英語)(和訳)pdficon_s point 【2023年5月4日】4月12日に受信したICRPからの返信(1)に対するCCNEの2通目のレター(英語)(和訳)pdficon_sとライブセッションの要旨(英語)(和訳)pdficon_s point 【2023年6月3日】5月24日に受信したICRPからの返信(2)に対するCCNEの3通目のレター(英語)(和訳)pdficon_s point ICRPからメールで届いた返信(3通) ※返信(英文)の要点のみ和訳しています。また、その内容にCCNEとして解説を加えています。

 

最初の4月7日付のレター(英語)(和訳)で、CCNEはICRPに対し、被災者や市民が参加しやすくなるよう、福島原発事故に関するセッションの福島での開催や、言語(英語と日本語の通訳)、参加費での配慮、オンラインの活用といった運営面での要望の他、下記の3つのセッションを設ける提案をおこないました。                   ● セッション “被災した市民の経験を放射線防護に活かすために                                        : ICRP 146のふりかえり”                                                                                             ● セッション “福島における甲状腺がん”                                                                     ● セッション ‟新勧告に向けて:市民の観点から導入すべき点”

これに対し、ICRPの返信では、現段階でプログラムを変更することは困難とし、ビデオやポスターでのプレゼンテーションへの要旨(アブストラクト)の提出や既存のライブセッションへの要旨の提出の提案がありました。

CCNEは2通目の5月4日のレター(英訳)(和訳)で、ステークホルダーの参加はICRPの放射線防護原則に不可欠な要素でありながら、福島原発事故後の12年間、無視されてきたとして、市民や学者を招待するセッションの設置の再考を促すとともに、企画・運営への提案の回答を求めました。また、ライブセッションへの要旨(英文)(和訳)を提出しました。

これに対し、ICRPの返信は、CCNEからはビデオプレゼンテーションでの提出を期待するとして、CCNEが提案したライブセッションについての回答はありませんでした。また、多言語のポスターや字幕付きのビデオプレゼンテーションを導入するものの、会議の言語は英語のみという回答でした。

こうした返信に対し、CCNEからは6月3日のレター(英語)(和訳)で、2011年以来、ICRPのシンポジウムで福島関連の報告を行ったのは、ICRPのメンバーをはじめとする福島県立医科大学や東京大学の教授であり、市民として報告したのはICRPダイアロークの関係者のみであること、ICRPは放射線防護策の策定にステークホルダーの関与が重要であると強調しており、今後の基本勧告の改訂でも実行すべきであることを指摘したうえで、CCNEがライブセッションで報告できないのであれば、‟セッション4: 福島第一事故の経験がどのように放射線防護を改善するか”のスピーカーを教えてほしい(我々はより多様で批判的な立場のスピーカーを推薦することができる)ということを伝えました。

これに対し、ICRPの返信では、ビデオの方がライブプレゼンテーションよりもCCNEのニーズに合っていると考えたとし、ビデオやポスターでのプレゼンテーションに「より多様で批判的」な講演者の要旨の提出を促してほしいといった返事がありましたが、セッション4のスピーカーの言及はありませんでした。

以上

 

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