大気圏核実験によって、日本では1954年、第五福竜丸などの漁船(員)の被ばく、水揚げされたマグロの回収・廃棄などの問題が生じました。
海外でも科学者や市民団体によって、放射性降下物が観測され、放射線被ばくへの懸念、消費者運動が広がりました。
これらに対応するために各国で議論が行われた他、1955年にはUNSCEAR(原子放射線影響に関する国連科学委員会)が設立され、放射線被ばくによる影響に関する評価が行われました。
これらの結果として、ICPR(国際放射線防護委員会)は1958年に勧告(ICRP Publ.1)を策定しました。この時代に現在の放射線防護に関する各種の制度が確立したと考えられます。
今回は、科学史家の樋口敏広さんに、市民や科学者の役割も含めた一連のプロセスを紹介していただきます。
参考1) 2020年に下記の著書を刊行され、 The Society for Historians of American Foreign Relationsの2021年、 Michael H. Hunt Prize for International Historyを受賞されています。今回は2章と6章を中心にお話し頂きます。
TOSHIHIRO HIGUCHI (2020) Political Fallout: Nuclear Weapons Testing
and the Making of a Global Environmental Crisis, Stanford Univ. Press
(出版社の紹介ページへのリンク 各章のアブストラクトを読むことができます[英語]) https://www.sup.org/books/extra/?id=23212&i=Contents.htm
参考2)樋口敏広 (2015), “「知の交渉」と放射線防護体制の多元性 : 第二次 世界大戦後初期における一般公衆の被曝基準の策定過程,”科学史研究, 54 (275), 178. (下記から、全文無料公開)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhsj/54/275/54_178/_pdf/-char/ja
1958年のICRP勧告が策定されるまでのプロセスをまとめた内容です。
ぜひ参加ください。
日 時: 2024年9月10日(火)10:00~11:30 ※ 米国東海岸からの配信のため、いつもと時間帯が異なります
場 所: オンライン開催(zoom)
プログラム:
<お話> 「大気圏内核実験時代と放射線防護体制の成立」 /樋口敏広さん (米国、ジョージタウン大学)
申し込み: 下記よりお申込みください。 https://keio-univ.zoom.us/webinar/register/WN__0oGK03XSbaYWeFSDsOndg
上記ページに氏名、メールアドレスを入力すると、アクセスに必要な情報が 送信されます。送信されない場合、メールアドレスが正しいか確認して下さい。
※ 案内が届かない場合は、email◎ccnejapan.com(◎は@に変えてください)までお知らせください。
お問い合わせ:email◎ccnejapan.com[◎を@に変えてください] TEL/FAX 03-6709-8083
福島原発事故後に適用された年間20mSv基準などのもとになったICRP(国際放射線防護委員会)の基本勧告が、2030年頃に改訂される予定です。
そのICRPが2023年11月6~9日の間、東京で総会(ICRP2023)を開きました。総会にあたり、被災者や市民、事故後の状況を把握する日本の研究者が広く参加し、事故の経験を踏まえた放射線防護のあり方を検討できる場となるよう、私たちはICRPに対して具体的な提言を重ねましたが、残念ながら受け入れられませんでした【経緯はこちらからご覧ください】。そのため私たちは、市民主体となるシンポジウムを他団体と連携して企画してきました(「放射線防護の民主化フォーラム2023」)。
福島原発事故後の放射線防護の最大の問題は、市民の人権や意向を無視した方策がとられてきたことにあります。2030年頃に改訂される基本勧告が原発事故の教訓を反映しないまま、改悪されることのないよう、市民も改訂プロセスに関わり、ICRPの勧告について学び、理解していくことが重要です。
そこで、今年も11月頃に企画中のシンポジウムに向け、ICRPとは何か、その勧告とは何かなど、基本的な事柄からはじめて、ICRPの勧告を読みつつ批判的に検討し、市民の観点からの放射線防護のあり方を検討する連続ウェビナーを開催することにしました。第1回から第7回までの「ICRP勧告について学び検討する連続ウェビナー」はこちらもご覧ください。